俳優を作品出演で食わせていけるようにしないと「演劇」というコンテンツは長く続かない

前回の記事では「プロを目指す人を対象にした演劇教育は長く続かない」俳優・声優志望者がコンスタントに「本番」「現場」に立つようにならないと専門学校、養成所などの演劇教育の場は長く続かないと書きました。

いくら真面目にレッスンを重ねても作品出演の機会が訪れないのであればモチベーションを保つのが難しいからです。

しかし、たとえ俳優・声優たちが作品出演を求める行動に専念してやっとの思いでそれを果たせたとしても、それによってまともな報酬は殆ど望めないのであればそれはそれで継続させていくのがやがて困難になります。

いくら作品出演を重ねてもステップアップの兆しが見えてこない、次に繋がらず単発で終わってしまうのであればこれもモチベーションを保つのは難しくなります。

 

それでも本気で素晴らしい作品を届けようと取り組んで見事にヒットした作品を送り出した、タイミング良く関われる場合はあります。

俳優であれば有志が集まり劇団を結成して舞台を企画して見事に著名な演劇賞を受賞した、声優も運良くアニメなどで大ヒットした作品に出演できることはあります。

このようにせめてヒット作をつくった、出演できれば出演者は出世が約束されるのであればまだ良いかもしれません。

が、この世界の厳しいところはそれでもその後、売れるとは限らないから残酷なのです。

これらの場合、誰が一番得をすると言いますか、注目される存在になるかというと舞台であれば劇作家、演出家であったり、アニメであればそのアニメ制作をするにあたってお金を出した出資者ですのでもはや現場で働いている人間ではありません。

俳優は星の数ほどいれど、台本を書ける作家や舞台を取りまとめる演出家というポジションは数が少なくなりますので、あんな素晴らしい作品を作り上げた人に仕事を依頼しようという人は出てくるのです。

その中で俳優だけが見向きもされません。これはなかなかショックが大きいです。

無名の俳優が作品出演をきっかけに何か境遇が良くなった例はあるのか探してみたところ分かりやすい例が、

映画「カメラを止めるな!」で主演を果たした真魚さんという方がこの作品のヒットをきっかけに複数の事務所からオファーがあったそうでワタナベエンターテインメントに所属できてその後は作品出演が増えたそうですが、既に退所しているみたいです。

カメラを止めるな!」は普段、映画を観ない人にも名前が知れ渡るくらいヒットしましたからね。このくらいのインパクトを与えてようやく目に見えた効果が表れるといったところでしょうか。

それでも、じゃあテレビドラマや映画でその後も主役を務めることができたか?と言われるとやはり厳しいようで、これで安泰というわけにはいかないからこの世界は厳しいと言われているのです。

確かにこの世界にインパクトを与えた、名前を広めることができたとしても安定とは無縁の演劇界。

せっかく面白い俳優だったのにやがて身を退く人というのは後を絶ちません。

特に中小規模の劇団だと、劇団としては評判良く公演を続けることができているけど俳優陣には経済的には潤っていない場合が殆どなので、やがて劇団員が年齢を重ねていくと共にやめていき、その劇団は後継者もいなく消滅なんていうこともあり得るでしょう。現にクオリティ高い作品は上演できていたけど所属俳優が一斉にやめていき解散した小さな劇団を知っています。

たとえ文学座や俳優座といった日本を代表す老舗劇団であったとしても、最近は劇団出身の俳優さんでブレイクしたという人は聞かなくなってきました。

このような大きな劇団であったとしても新たに売れている俳優が出なければ若い人に知られない、所属したいとは思われなくなり人材不足に陥る可能性はあります。

声優界でも同じ人ばかりが出ているという印象は拭えません。実力社会ですから仕方がないですが、後継者の育成という観点ではこの世界は不安があると思っております。

いくら俳優や声優は腐るほどいると言っても誰でも良いわけではありません。それなりの人材はやはり貴重です。

そんな貴重な人材と言ってもいい人でさえ志半ばでこの世界から去るような環境というのは衰退に繋がっていくので、もう少し面白い人材は活躍できるような構造になってほしいと願います。

そうしなければ「演劇」というコンテンツは長く続きません。

 

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