今回は「チケットノルマ」というテーマで記事を書いていきたいと思います。
演技の勉強期間ともいえる専門学校や養成所を出て舞台に立った時に各出演者にこの「チケットノルマ」が課せられたという経験がある人もいると思います。
場合によっては専門学校や養成所が企画した舞台でもこのチケットノルマがあります。
その名の通り一人〇〇枚はチケットを売るように努力してくださいという意味です。
それで売れなかった場合は?
その分だけを自腹という売れ残った商品を従業員に買い取らせるどこぞのブラック企業と同じことをしています。
これ、おそらく事前に知らなくてこういう事態に初めて直面して知ったという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そういう意味でもまだこの世界に挑戦してみようか迷っている、興味があるだけの段階という人もこの記事を機に是非、知っておいてほしいことなので最後まで読んでいってほしいと思います。
ただわたくしは運が良くチケットノルマは課せられなかった上に、売った枚数一枚からチケット料金の数十パーセントをキャッシュバッグしてくれたという舞台に立ったことがあるので、全ての舞台がそうではないと思います。
特に客演で出演した俳優は舞台上演のために協力してくれたという認識で、いわばお客様なのではなるべく丁重に扱うという劇団もあるあるはずです。
ただこの場合でも劇団所属の俳優はチケットをどれだけ売ってもキャッシュバックは無しとやはりどこかで身を削っています。
わたくしはまだ運が良かったとはいえ同期や先輩、後輩の話なんかを聞いているとこのチケットノルマに悩まされていた人はけっこう多い印象でした。
なんとか売るために3千円のチケットを千円に値引きしていたり、最悪の場合だと無料で良いからとにかく観に来てくれと言われたこともあります。
個人的に思うのはこのような方針の舞台に立つことによって未来はあるのか?です。
なぜこんな待遇を受け入れてまで舞台に立つのか?
それはそこまでしないと出演する機会が無いからでしょう。
俳優をはじめとしてこの芸能界は非常に厳しい世界だと言われています。それは承知の上で目指しているとは思いますが、その厳しさというのを的確に体現しているのがこのチケットノルマ制ではないでしょうか?
売れ残った分は自腹、つまり逆に出演者側がお金を払わないと舞台上で演じることさえ許されないという意味です。
俳優というのは本来、作品に出演することによって報酬が発生するのになぜこんなことになっているのか需要と供給のバランスでしょう。
俳優の需要は大してないのに、舞台にドラマに映画に出演したいという人はごまんといる。
おかげでとにかく出演機会を得たいと思っている人達がこのような悪条件をのんでまでも出演しようとしている。
俳優の在庫過多で、投げ売りどころか出演させてくれるのなら、こっちがお金を払いますという状態で売り場に並んでいるなんとも悲しい扱いなのです・・・。
この現状を把握している人が作品出演に飢えている俳優をターゲットに舞台を企画して、はなから売れるわけないであろうチケットノルマを設定、出演者からお金を搾取する、最初からこれが狙いの舞台もあるかもしれません。
他者様が書いた参考記事「チケットノルマでお金を稼ぐ舞台主催者」
そうでなくてもなぜ売れ残った分は出演者が補填しなければいけないのかは単純に赤字を出さないためです。
このシステムを採用することによって個人としては大損でも、劇団といった組織は守られて次の舞台をまた上演することができます。
これも出演機会を確保するためのやもを得ない方針となります。
このように多くの俳優は出演機会をお金を払ってまでも得ているという実態があります。イコール、俳優の需要は多くはないけどやりたい人はたくさんいるというのはこのことからも言えます。
そもそも出演するだけで報酬が入る舞台とはどういうものなのか?を考えた時に・・・。
簡単に言えばその舞台が上演されることによって多大な利益が見込まれる作品です。
では、あなたが出演することによってどんな利益がもたらされるのか?と問われた時に何も答えられないのなら、残念ながら価値のある俳優とは見なされないのです。
そういう眼で見れば多くの舞台は利益など見込めない舞台ばかりです。
出演者を見ても誰?という人ばかりではそこまで動員数は見込めないでしょうし、その動員数も劇場のキャパシティがいくらとはっきりと限界値が分かっている以上は見込める利益にも限りがあります。
それを補うためにはグッズ販売やチケット料金を良い席にはさらに上乗せする、或いはプレミアムチケットなるものを販売して終演後に出演者と交流できる特典を付けるなど、少しでも入ってくるお金を増やすことは可能でしょうが、そんな舞台に自分は立てるのか?を自問してみてください。
それに対してどんな小さな舞台でも絶対に外すことのできないコストというのはたくさんあります。
劇場使用料、照明、音響、チラシの印刷など・・・。
舞台上演にあたって絶対に支払わなければいけないお金はたくさんあるけど、入ってくるお金はいくらになるのか不透明という博打な催しものなのが舞台上演というものなのです。
こう考えると、どこでも良いから舞台に出演したいという発想も無くなるのではないでしょうか?
もしも舞台に出演したい動機が、いつか売れる俳優になるためのステップアップのためという位置付けならそれが見込める舞台を見極めましょう。
例えばサッカー選手のように最初は国内リーグから始まり、そこでの活躍が認められて次なるステップとしてヨーロッパのリーグに移籍したというようなイメージで捉えているならある程度、注目されていることが必要です。
サッカーならプロリーグだから注目されているのです。サッカーやりたい人が集まってグランドを借りて試合をしているわけではありません。
当たり前ですが誰も観てない舞台に出演したって自分の名前が広まるわけはありませんし、その観に来ているお客さんが出演者の身内ばかりでもあまり期待できないでしょう。
ましてやチケット販売を出演者に丸投げしている上に、上記のように売れ残った分は自腹なんていう舞台に良い作品を届けようという気概はあるのでしょうか?
主催者が出演者は無名でも絶対に観に来てくれた人を楽しませることができると自信を持って上演する舞台であれば、むしろチケットを売るのに一番必死になるのは出演者ではないはずです。
良質な作品を届けるためではなく、ただ単に出演者からお金をむしり取る舞台は論外であるのは言うまでもありません。
やはり出演者が必死になって舞台を宣伝しなくても、その主催者自体に信頼がおかれていて、ここの舞台は面白いよと評判が良くて動員数がある程度見込める所が好ましいでしょう。
そんな所だともちろん出演したいと思う俳優は多いので、そう簡単にはいかないでしょうがこのくらいの競争には勝てないとこの世界でやっていくのは難しいので挑戦するしかありません。
そして、そういう舞台に絞ると出演機会が減ってしまうのは必然ですがここは「量より質」
元々、興業として成功させる気のない舞台に10本出演するより演劇界から注目されている舞台に1本出演する方が価値はあると思います。
俳優を目指した以上、演じたい。舞台に立ちたいと逸る気持ちになるのは分かりますが時間とお金をただ費やしただけで終わったというようなことはないように気をつけましょう。
ではまた。
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