【映画】洋画は字幕、吹き替えどちらで観るか?

演劇コラム

このオススメ作品のカテゴリーでは映画も当然ご紹介していくわけですが「洋画」の方が圧倒的に多く観てほしい作品があります。

なぜなら、このブログで教えている演技法はどこから来ているかと言われたら「欧米」から伝わっているものになりますのでその本場で育った俳優の演技は是非観てほしいのです。

もう一度言うように日本の演劇と言ったら「歌舞伎」や「能」になります。あなたが歌舞伎俳優になりたいというのであれば「洋画」を観る優先順位は低いと思いますが、そうではなく一般的にイメージする「俳優像」の方であれば絶対に参考にして、素晴らしい演技のイメージを鮮明に持てるようにしないといけません。

その一般的にイメージする「俳優像」というのもやはり明治期にヨーロッパの演劇スタイルが日本に伝わったのが始まりで、そこから日本の色が多少なりとも加わったという感じなので、源流はそこにあります。

もしも「これは私が編み出した独自の演技法です」という指導者がいるのであれば疑った方がいいです。そんな事を言える人も本当はこの「欧米」で主流になっている演技論を「参考」にしているはずです。

そう、誰もが何かしらを、昔から伝わっているものであったりを「参考」にしているのです。今の時代で「完全オリジナル」を生み出すというのは相当、難しいです。

小説なんかでもこんな面白い話、今まで誰も書いている人がいないんじゃないか?と思ったとしても大体は既に似たような作品はあります。

演劇もどれだけ歴史が長いと思っているんですか?って話ですね。

今は2021年です。創作分野で未だかつて、どんな偉人でも考えなかった、思いつかなかったものを生み出した人が出てくるというのは考えにくいです。

新しいテクノロジーを使った表現方法とかは出てくるかもしれませんが。

 

と「洋画」をたくさん観てほしい理由を話したところで本題です。

趣味で洋画を観るのであればお好きな方をどうぞという話ですが俳優、声優を目指している、演技が上手くなりたいから参考にしようというような人が観る場合「字幕」と「吹き替え」どちらを観てほしいとか言われたら、

「字幕」の方です。

少なくとも「吹き替え」を観るけど「字幕」は観ないという選択はしないでください。逆に「字幕」では観るけど「吹き替え」を観ないというのなら構いません。

声優の方に強く意識がいっている人なら「吹き替え」の方を観たいと思う人もいるかもしれませんが、そのような人でも「字幕」を観てください。

その理由を話しますと「字幕」で観るという事は俳優の声は「原音」で聴くという事ですよね。

その「原音」のセリフこそがこのブログで推奨している「リアリズム演技」だからです。

自然な、ナチュラルな演技とも言えるかもしれません。

では逆にその声を消して新たに日本人が声を当ててしまうと、どうしても不自然と言いますか誇張されたものになっている場合が多いです。

そもそも「欧米人」を価値観や全く異なる文化で育った「日本人」の声にする事自体が無理がある、不自然なのです。

個人的にはどうしても見栄を張ったような、カッコつけた演技に聴こえてしまうのですよね。

納得のいくであろう例としてアメリカ人が「歌舞伎」をやりますって聞いたら「できるの?」って思いますよね。それと同じ事が言えて日本人がアメリカ人を演じるというのはかなり無理がある事なのです。

そんな声の後に「原音」を聴くとこんな力抜いてセリフ言っていたんだと思うくらい印象が異なります。

吹き替えは張ったような声で、原音は空気が抜けるような声と言いましょうか。

 

なんかここだけを読むと「原音」の方はやる気あるの?って思われる方もいるかもしれませんが、逆にそのくらい力みがない状態で演技ができるならそっちの方が実は凄い事をしているのです。

舞台上で、大勢の観客の前でもまるで自分の家のようにリラックスして演技ができるのはかなりの強心臓の持ち主と言っていいでしょう。しかしそれができるからプロと呼べるのです。

本番でリラックス、余計な力が抜けた状態でプレイするというのは特にスポーツの分野ではかなり重要と言われてますが、多くのアスリート達はなかなか難しいと感じているはずです。特に大きな大会の決勝戦ともなれば一流の選手でも緊張から思うようにプレイができずに涙をのむケースが散見されます。

そんな緊張して当たり前と言われている環境で、まるで学校の休み時間に遊ぶような感覚で楽しんでプレイしている人がいたらどう思いますか?

「この人、凄い」って恐怖にも似た感情がわいてくるかもしれません。

だから演劇でも同じ事が言えて張り切って演技しようって思うより、普通にいつも過ごしているように居ようってリラックスした状態の方が凄い事をしているんですね。

我々は普段、慣れた日常を過ごしている時にそんな緊張する場面というのは多くはないはずです。そして俳優はそんな普通に、退屈と思っているように過ごしている人間を再現するのが仕事です。

そんなまるで日常の一場面を見事に再現しているというシーンは洋画にはたくさんあります。

もうリアル過ぎて「演技」をしているというか普通に「暮らしている」ようにしか見えないと思う時もあります。

せっかくそんな一流の演技をしているのですから、声もオリジナル音声で聴いた方が演技が上手くなりたいという意味でも観るならこちらの方が参考になります。

それに俳優自身は役によっては体重を落としたり、トレーニングしたり、もちろん役作りという意味でも相当の準備をして撮影に臨むわけですが、吹き替えを担当する声優自身は同じくらい準備に時間をかけているかと言われたら、そうではありません。

そういう意味でもいくら日本では一流の声優と言われても、なかなか画面の向こうの俳優と同じ質の演技は難しいです。それに加えて日本人が欧米人を演じるのは無理があるという壁がある。

洋画、その作品の本来の良さを味わうのであれば、本物の演技を勉強したいという目的なら音声は原音で、字幕で観るべきだとわたくしは思います。

 

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