おそらくどの業界でもいずれ直面するお悩みと言えば『世代交代・後継者の育成』ではないでしょうか?
特に経済の分野ではその後継者がいない、残念ながら引き継いだのが優秀とは言い難い人であったために会社・事業が長続きしなかった、一世代で終わったという例はこれまでたくさんあったであろうと予測されます。
スポーツの世界でも常にそれを意識しないと、あっという間に今、活躍してくれている選手のピークは過ぎて引退してしまい、次世代の若手が育っていないとなると瞬く間にその競技は衰退していくので『人材育成』は怠ることができません。
しかし、どんな世界でもそんな共通の難しい課題がある中で『芸能界』に関してはそのいわば『人の循環』が他の業界よりもかなり遅い所と言えるかもしれません。
例えばテレビで、主にバラエティ番組を観てもらえば分かると思いますが正直、出演者の顔ぶれが20年くらい前からあまり変わらないな〜なんていう感想を抱く人もいるのではないでしょうか?
ちょいちょい今の時代ならではの、インターネット発の有名人がゲスト的な位置づけで出てくるとはいえ、メインで据えられているのはわりと昔から居る芸能人達で固められています。
こうなってしまうのも芸能界は年齢という壁がない、幾つになっても本人がやる気であれば仕事をすることは可能ということに加えて、既に出演枠が満席になっている状態だというのが挙げられると思います。
この『出演枠が満席』というのはいま直ぐに新しい人材を探さなくても暫くはやっていけるということを意味します。一度その席に座ることが出来たならそう簡単に離れる人がいないってことですね。
そもそもテレビ自体が昔と比べて視聴率がガタ落ちで、新しいことに挑戦する余裕がないという事情もあると思いますが、今から芸能界を目指すというのはテレビ全盛期の時代と比べたらかなりハードルは上がり、余程の逸材か権力者のコネがないと難しいとは言えると思います。
こんな事情を私のブログでは『需要と供給のバランスがあまりにも悪い』という表現で表しています。もう人手は足りているが、それを知らない人が殺到しているような状態。
やりたい人がたくさん居るなら人の入れ替わりも激しいのでは?と思いがちですが、やはり加齢による衰えという理由で引退というのはこの世界では70代、80代くらいまではやっていけるんじゃないかと考えればそうでもないんですよね。
それに勝ち負けを決める世界でもないので、今となっては正直、魅力にいまいち欠ける人もまだ席に空きがある時代に入ってきた人ということで、そういう人もかなり優位になりますね。ちなみにこういうのをビジネス的には先行優位性と言ったりします。
どのくらい需要と供給のバランスが悪いかはこちらの記事にその一例が書かれています↓
とはいえ、短期間で一般のサラリーマンが生涯稼ぐ額を稼ぐことができれば、数年くらい仕事しなくて良いんじゃないかと思うことはあるはずです。現に昔から活躍している大物芸能人は最近は観る機会が減りました。
音楽であればヒット曲を何曲か出すことに成功したら3、4年くらいは充電期間で活動をお休みしますなんて言葉はよく聞きますよね。
このようにひとたび成功をおさめれば、一気に大きなお金が入ってくるのが芸能界やエンタメの世界だと思うのでいち時代を築いた大物が活動ペースを緩めた、止めている間に新しい人材が入ってこれる余地が生まれるわけでありますが、なんとそうもいかない世界も存在します。
個人的には今でも若い人がエンタメ分野の世界でやりたい仕事、憧れる仕事の上位に入っているのが声優というお仕事だと思いますが、この世界ほどタイトルの通り『人の循環』が遅い世界はないかもしれません。
理由といたしましては今まで述べた通り、
根本的に仕事の数が少な過ぎる上に年齢による壁がないに等しい、70代・80代になってもやることは可能でなかなか席が空かない、
それにプラスして、
声優の場合は入ってくる報酬があまりにも少ないということが挙げられます。
これでは、
成功を収めてたくさん報酬が入ってきたから、暫く休もうかな、なんていう判断もできなくなるのです・・・。
声優ファンなど一般の人にも声優の報酬の少なさは知られるようになりましたが、まさに声優は知名度や人気の高さのわりに払うギャラが安くて済むというかなりコスパの良いタレントとして見られています。
「知っておきたい声優のランク制(総合ヒューマンアカデミーより)」
もちろん声優さん自身からしたら好ましい状況ではありません。
上記のリンク記事のように声優のギャラはランク制で固定されており、最低は一万五千円で最高は四万五千円になります。つまりこれ以上は基本的に報酬が少なくなることもありませんが、多くなることもないのです。
一応、このギャラであれば週に2、3回くらいのペースで働けば生活できるだけの稼ぎは得られる設定なのですが現時点での声優業界の競争率の高さを考えれば毎週、しかも2、3回お仕事があるって人気声優ですか!?と驚かれるレベルなので、やはりこの報酬ではもはや少な過ぎるのですよね。
例え「鬼滅の刃」という超ヒット作にメインキャストで出演しても、おそらく支払われるギャラはこの間の報酬になります。この例えで声優は知名度・人気が高いわりにギャラは安くて済むと言われるゆえんが分かるのではないでしょうか?
音楽でいったらミリオンヒットを飛ばしたに等しい成功を収めても、支払われるのが一話あたり(30分尺)あたり最高でも5万円以下であるならたくさん稼いだし、今後はちょっとお仕事減らそうかな?なんて言うことはできないでしょう・・・😓
こんな事情だから声優たちが食っていくために、アニメやゲームの人気を利用した声優が出演するイベントやキャラソンを出してライブを開くなんていうことが盛んになったのでしょう。これならギャラは固定されず、儲けに応じた報酬が支払われます。
が、そんな「アイドル声優」の時代の波に乗れた人は良いですが、声優が顔出しすることなんて滅多になかった時代から活動している声優さんだとそうはいきません。自分がこれからも声優として活動していきたいのであれば何歳になっても、仕事を減らすわけにはいかないと思っていることでしょう。ベテランの域に達しても厳しい事情はこの外部記事にも書かれています↓
ベテランになるほど仕事が減る?声優業界のギャラ&ハラスメント事情…60代の新人が重宝されるワケ(テレ東プラスより)
世の中の常識である歳を重ねれば徐々に若い人にバトンを渡していく、というのがなかなか出来ないのです。
さらに50代、60代の声優さんが小学生の役を演じることが出来る世界です。これが実写の俳優であればお笑いのコントでしか通用しないことがアニメの世界では可能なのです。
これでは若い人には若い人のポジションがある、中堅には・・・という前提も崩れます。
このことから芸能界は、その中でも特に声優の世界は『人の循環』があまりにも遅いと言えることが出来ると思います。
重ねて若い人が憧れるお仕事ではあり目指す人は厳しい世界だとは承知の上だとは思いますが、その厳しさが実力が認められなかった、という厳しさよりもさらに難しい、そもそも若手にチャンスが与えられることさえない構造になっている、長く活動しているベテランの人も余裕がないという、もっと根深い問題を抱えているのです。
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