【ビジネス視点から見た演劇界の問題点③】 『統率する組織』の存在は必要か?

個人的に思う「演劇界の問題点」をテーマにした記事第三回目です。
前回はこちら↓

誰にでも『チャンス』はあるのか?

今回は演劇界というより「俳優・声優間の問題」という側面の方が強い気がするのですが、この集団を取りまとめる組織の存在についてというお話です。

只今、パリ・オリンピックの真っ最中でございますがどの競技にも、
日本〇〇協会or連盟」みたいな団体が存在しているはずです。

その競技の「中央組織」みたいなものでしょう。
この組織が中心になって五輪以外の大会も開かれるわけです。

では俳優・声優にはこのような組織・団体はあるのか?と言われますと代表的なものというか、私が知っている名前として・・・、

日本俳優連合

日本芸能従事者協会

これらがそのイメージしているものと近い活動を行なっていると思っています。

他にも演出家や劇作・脚本家、劇団の団体もありますね。

このような組織を作るメリットといたしましてはやはり「同じ志を持っている人を一ヶ所に集めることができる」だと思います。

定期的に集まって情報共有をしたり、今後の在り方を話し合ったりと。あとは単に交流する機会を作るだけでも刺激を受けられますよね。

この他にも期待できることとしては「困った時の相談窓口」や「時に一つの組織として交渉できた方が強い」ことではないでしょうか?

特に俳優・声優とは基本的には個人で活動していくものです。依頼があったらその事業者の一員に一時的に組み込まれて仕事が終わるまでそこに属するわけでございますが、ご存じの通りこの世界はトラブルが絶えません。

パワハラ・セクハラなど不当な扱いを受ける、報酬の未払いなど・・・。

そんな場面に直面してしまった時に事務所に所属しておらずフリーだと泣き寝入りしてしまった事もあったでしょうし、その仲介役であるはずの事務所、劇団に問題があるとしたらもはや頼る所がなく孤立状態になります。

そんな時にこのような組織があって、こんな仕打ちを受けましたと申告することができる場所があれば俳優・声優の立場を守ることができますよね。

報酬に関してはガイドラインを作って最低でも貰える金額を定めることができるのもこのような組織ではないでしょうか。

日本俳優連合」はそれでアニメ出演のギャラを支払う際に出演者のランクで決めるように明確な表を作りました。(このランクが適用されるのはこの組織に属している人のみなので全ての人に適用される報酬の目安ではない)

たまにある人が俳優や声優の「労働組合」を作ることができないか考えているみたいな発言をする人も見たことありますが、こういう立場が弱くなりがちな職種にこそ必要な組織ではないでしょうか?

アメリカではちょっと前に「ストライキ」が起きましたよね。
このニュースを聞いた時は日本ではそんな事を起こせる組織はないんじゃなかと思いました。個人で活動していくのが基本とはいえその職種全体の危機に直面した時には一つにまとまる事も時に必要なのではないか?と感じることもあります。

一つにまとまる
という意味ではこれまで書いてきた問題点でも共通しているのは演劇界ってなんかバラバラなのではないか?という点だと気がつきました。

「俳優」と「声優」は別業種だという空気がある、
映像作品によく出演する人は舞台には出ない、逆も然り、
活動している人、万人にチャンスは与えられず上手く人脈を作れた、繋がれた限られた中でしか仕事は回っていない・・・。

まるで業界全体を盛り上げていこうというより、各々がやりたい事で上手くやっていければ良いという感じで、これでは活動が軌道に乗っていない人との格差がどんどん広まり長期的には衰退へ向かいます。

そうならないためにこのような組織が統率していくのも一つの手です。

俳優・声優の人数が増えすぎてしまった、というのはよく言われることです。

こんな膨大な人数がいても仕方がないのに際限なく増えているのが現状。

そこに歯止めをかけるためにこのような組織が音頭をとって、
俳優・声優活動をしたい方は指定された養成機関で訓練を受けて修了してください、そして上記リンクのような組織・団体に加入してくださいなどのルールを作るのが良いでしょう。

俳優・声優とは「資格制」ではないのでその立場を保証してくれるものはない、演技未経験者でもいきなり主役をやらせてくれる事があるなど演技を真面目に勉強してきた人を蔑ろにしているような側面もあるので、ある種の制限は多少はあってもいいとは思います。

それに、
俳優・声優になるためにはどうしたらいいですか?

という質問に一般的には演技の勉強を一定期間して事務所や劇団に所属してくださいというのが多くの人が持っているイメージでしょうが、それは一つの選択肢に過ぎず実態はどんなやり方でも可能性はある、というのが答えです。

先述したように演技未経験でもOKな場合もあります。SNSの活動で有名になって演劇コンテンツ出演のオファーが来ることもあるでしょう。スポーツ選手が現役引退後にドラマ出演の例もあります。アイドル歌手の引退後は俳優活動へ転身したというのもよく聞きます。

このようにこのやり方で合っていると信じて努力したのにそうでもなかった・・・というのはなかなかショックが大きいです。

そこで、
目指し方を統一させる意味でも「統率している組織」が具体的に指定した場所で訓練をした後に、これまた指定した組織に加入して、俳優・声優の仕事を出来る人はこの過程を経た人のみが出来ますとなれば明確な基準ができることになります。

少なくともそれ以外の方法だと「アマチュア」で「プロ」と名乗りたければ「正規ルート」なるものを通ってくださいと言うことはできるのではないでしょうか。

もちろんそんな「正規ルート」で毎年全員が俳優・声優になれることはありませんので、自分はそのルートを経ていないから俳優・声優にはなれていないと自覚することができて諦める、まだ諦めないの判断もより単純化します。

現状ではどんなやり方でも可能性はある、いくつになっても可能性が無いわけではないと可能性が無限に広がり過ぎて、さすがにある程度は絞った方がいいのでは?と個人的に思うところです。

こんな風に「制限」をかけていくのも必要だとは思うわけですが、そうなってくると前回の記事で書いたように「誰にでもチャンスはあるのか?」という問いには「定めたれた手順で俳優・声優になれた人のみにチャンスがある」と言うことができて結局は「全員にチャンスを与えるのは無理だ」とい結論になってしまうわけです。

すなわち、
「競争に制限をかける」流れは人数が増えればどんな形であれ必然だということになります。

これは物理的な問題でもあるので仕方がないです。
ならせめて表立ってアナウンスするのもそのルールを定めた組織の役割だと思います。

と、ここまでけっこう真面目に考えて書いてきましたが、
これはいち演劇人だった私の絵空事のようなものです😓

理想はそうだったらいいね〜くらいには共感していただけると思いますがご覧の通り現実はそうはなっておりません。

俳優や声優の歴史の長さを考えれば、私が生まれる前に既に誰かが動き出してくれても良いような気がしますが・・・笑

演劇コンテンツの質を向上させるためにもどの作品にも確かな実力がある選ばれた人しか出演できないようにするのは良いことだとは思いますが、その最後に選ぶ側というのが別の立場にいる人であるというのが現時点でもそうはなっていない要因ではないだろうか?と推測をしております。

いくら俳優・声優が集まった組織が、
この人は将来、有望だ、そうじゃないとジャッジをしても、最終的に出演させるかさせないかの権限は演者にはありません。

それでもそれらの人達と協定を結んで、起用する際はこの中からお願いしますと決めれば良いのかもしれませんが、あまりにも要求することが多く面倒だなと思われたら、そっちがそういう態度ならもうこっちが勝手に決めさせてもらいます、というリスクも大いにあり得ます。

俳優・声優というのは受け身の側です。台本を貰わないと仕事に取りかかれません。自発的にコンテンツを企画する役割はありません。

ならその企画する側に嫌われたら仕事が無くなることを意味しますので、あまり強く出ることもできないのが容易に想像できます。

それこそ報酬を上げてもらえないなら「ストライキします」と言ったら「じゃあ、やりたい人はたくさんいますので他を探します」と反論されたら弱腰になってしまうでしょう。

これを有効にするのはそれこそ一つにまとまって、要求が通るまで抜け駆けは許さないというくらい団結しないといけませんがそれはかなり難しいでしょうね〜。

それにある定めたれた手順を踏まないと俳優・声優の仕事はできないというルールにしてしまうのも実はビジネス的にはデメリットがあります。

それがコストが増える、時間がかかるということ。

以前だったらあの人いいね!と惚れさせたのなら直ぐに採用できたのに、そんなルールが出来たことによって直ぐには出来なくなった・・・というのはビジネス的には大きな損失に繋がります。

ビジネスはスピードも命です。

見込みありそうな人材を直ぐに起用できないって予想以上に足かせになるんですよね・・・。

コストが増えるというのは組織として「プロ」に値する役者とは?というような指針を、育成プランを厳密に作成する必要があるので、それだけでどれだけの時間とそれを決める人をさかないといけないんだという問題があります。

それよりも何の決まりもなく緩く、起用する側は自由に気に入った人を使える方が楽でいいとメリットもあったりしますから難しいところです。

なにより演劇などの芸術分野って学校のような場で教えられたから出来るものじゃないし、同じことを教えられた人しかいないというのもつまらないです。

個性」というのが何より大事な分野であるので、だったら自分が良いと思った道を歩んで、それぞれで努力させる方が面白い人材は出てくることでしょう。

と、最後は「統率する組織」はあった方がいいのか、なくていいのかどっちなんだという感じになりましたがその通り断言はできません。

俳優・声優の立場を守る意味ではあった方がいいけど、それでその組織に属していない人に仕事ができるチャンスはないとはっきりと定めてしまうのは、早計のような気がします。

ただせっかく隅々までかき集めれば万単位の人数の役者がいるなら、存在感のある組織を作ること自体は有りだと思います。活動内容はどうするかは一旦、置いておくとして。

今のところ活動をしている人全てが名前を認知しているような組織・団体はないのがある種の問題点ではなかろうか?

とここでは結論を出したいと思います。

皆さんはどう思うでしょうか?

では今回は以上になります。ここまでお読みいただきありがとうございました。このシリーズはここで終了します。また何か思いつけば書くかもしれません。

このシリーズの第一回はこちら↓

各々のコンテンツの『繋がり』が薄いのではないか?

 

コメント

  1. […] 「統率する組織の存在は必要か?」 […]

タイトルとURLをコピーしました