【俳優のお仕事の流れ】 CM・プロモーション映像などの撮影編

演劇コラム

かつてこんな言葉を言われたことがあります。
散髪する際にいつも私を担当してくれている方が不在だったのでその日だけは別の方に切ってもらったのですが・・・、

「お仕事は何をされていらっしゃるのですか?」
「一応、俳優をやっています・・・」

と控え目に言ったらその人が予想以上に驚かれて、あれこれ聞いてきました。そして・・・、

私これまで特別な仕事をされている方だと、プロスポーツ選手の方にはこの仕事を通して何人か会ったことありますけど俳優さんは今日初めてお会いしました

と告げました。
「(えっ俳優ってそんなプロスポーツ選手よりも希少人種なのか?😓)」

と内心思ってこっちも戸惑ったものですが、
まぁ確かにこの仕事で稼げる人はもしかしたらプロスポーツ選手よりも少ないのかもしれません。

多くの人は作品に出演しても、主役をやってもまともな稼ぎを得られない場合もあるんですからそりゃあ殆どの人はどこかのタイミングで身を退くと思われます。

そう考えると意外と俳優の仕事を経験している人って思った以上に少ないのかもしれない?と思い、ちょうど実は先日ご縁があって撮影の仕事をやらせてもらったので今回は「俳優のお仕事の流れ」というテーマでその仕事の一つである「撮影」について書いていこうと思います。

① 依頼、連絡が来る。

先ずはこれがないと始まらないわけですが、その仕事のお話ってどこからやって来るの?というのが気になるところでしょうが、私の場合は事務所や知り合いの俳優からです。果たして求人情報を見たら、ネット・SNSで検索したらある撮影の出演者募集があった、なんてパターンはあるのか?と疑問に思ったことがありますがどうなんでしょう。

そういうのがあるとすれば個人・小規模団体、アマチュア制作者が人が欲しいとなった場合に限られるんじゃないかな〜と予測しております。基本的には一般公募はまれで、ある特定の人にしか行き渡らない閉ざされたような中で回ってくるものだと思っております。

知り合いの俳優から来る、とはどういうことかと申しますと一度だけある出演者が急に出られなくなったので代わりを探していると連絡が来た事があります。こんな流れで出演が決まる事もあるんですね。

・急にやって来る事が多い・・・。

上記の例からも察するかもしれませんがこういう話ってけっこう急にやって来ます。撮影日の一週間前、数日前とかにどうですか?というパターンもあります💧

そのついこないだやらせてもらったのは撮影日の一ヶ月前に連絡が来たのですが、これが今までの中で一番余裕のある日程だったかもしれません 笑

かつてこういう芸能活動をやっている人をアルバイトで雇ったことがある店の店主から面接で「じゃあ急に休まれることもあるってこと?」と質問されたことがるのですが、その理由といたしましてはこのように急に仕事がやって来るからでしょう・・・。

こんな不規則なスケジュールでは本当に正社員として働きながら芸能活動は無理ですね💦

・選考が挟まれることもある。

依頼が来て「引き受けます」と返せば決まる場合(事務所が全ての出演者派遣を請け負ったから)もあるのですが当然、選考・オーディションを経て決まることもあります。この前の撮影は書類選考があったので、採用メールが来た時はやはり嬉しいものです。

② 出演が決まったら?

出演が決まればその撮影の概要が記載された資料が事務所からや依頼者から直接、紙なりメールで渡されます。よく読みましょう。主に撮影場所や撮影に参加されるにあたっての注意事項(置く場所があまりないので荷物は少なめ、大きな荷物は持ち込まないなど)、撮影時間はどのくらいなどが書かれています。

・服装を指定されることはよくある。

服装はこんな感じのを用意してくださいとはよく頼まれます。撮影場所が野外で着替える場所がない時は着て来てくださいとも言われるかもしれません。急に頼まれる仕事でもあるのでそんなの用意できないよ!なんて言いたくなる服は指定されないと思われます。(企業名やロゴがプリントされたのはNG無地で、黒いスーツで来てくださいなど緩い指定)

あとは髪型はあまり派手なのはご遠慮くださいくらいですかね。

・守秘義務は守ろう!

このような立場になったら世に出る作品を事前に知ることができるいわゆる「関係者」になります。間違いなく撮影日時、場所は第三者に漏らさない、今度こんな撮影に参加することになったなども家族・友人含めて口外しないでくださいと厳しい口調で言われますので浮かれてついうっかり話してしまう事がないように!

これを警戒してなのか、当日まで自分は具体的に何をやらされるのか分からないことすらあります。つまり早めに集めたりして、事前説明をしてそれが初めて判明するということです。

ただ企業内向けの映像撮影とだけ言われて、いまいちどんな内容に仕上がるのかよく見えてこない撮影があったり、広く一般にお披露目しない映像の撮影もあります。このパターンだとそこまで思わず話したくなるような内容はないかも?

③ 当日、現場での流れ

さぁ、そんな準備を整えていよいよ撮影現場に向かうわけですが大体、初めて行く場所、ちょっとした郊外に連れて行かれるので迷わないように時間には余裕を持ちましょう。最悪、集合時間に遅れてしまうと参加出来ないこともあり得ます。

・待ち時間が異様に長い、タイムスケジュール通りに進行することはほぼない。

これ、自分が経験した現場全てこれだったのでこれは覚悟した方がいいです😅

集合場所に来たもののロケバスで待機させられてそこで2時間、3時間は待ったなんてことはざらです。最長で4時間😱

こうなると気になるいつ帰れるんだ?問題。

自分の出番は終わったそうなので帰っていいですって言われて比較的、早めに帰れたこともありますが撮影が終わるまで帰れないような立場だと23時ちょっと過ぎまでかかった事があります。これはお住まいによっては電車では帰れないのでは?と思うことも。

・出番が来てもそれなりに過酷。

長い待ち時間の末にようやく出番がきた!と最初は気合いに満ちるわけですが、当然仕事なので撮影が始まってからも大変です。

何度も繰り返し同じシーンを撮影をするのは必至です。
どうやら監督が気に入らないようで何度も撮り直しをして予定がズレたことも。
それである出演者は3時間で終わる撮影と聞いたからその後にも予定を入れてしまったので、帰らざるを得なかった事もありましたかね〜。個人的には撮影の日に別の予定を入れるのは厳禁だと思っている。

映画みたいに長くないし、そんな多くのシーンはないけどそれでも同じ事を何度も、数時間やるとしんどいものです。これが野外だと尚更でしょう。ちなみに野外だと急な悪天候で撮影が中断する事はもちろんあります。夏場はゲリラ豪雨もありますし、野外・夏の組み合わせが一番過酷でしょうね。

③ 撮影終了、その後は?

撮影を終えたということは色々と自分は知ってしまったわけですので、変わらず守るべき秘密は守りましょう。

そんな秘密にしておかないといけない項目が多い撮影は契約書にそれに関する文面があります。(撮影の存在を教えないこと、知り得た情報を終了後もずっと漏らさないこと、それを破って悪質だと判断した場合の処罰は・・・など)

特に出演者にあの人がいた、CMで使われる楽曲は何なのか、それどころかまだ世に出てないCMソングが聴けてしまえることもあるので、ここまで来ると細心の注意を払って気をつけようってなりますね。

撮影の仕事を通して某テレビ局にもお邪魔できましたし、この仕事で私は「あぁ、芸能界に自分は入ってきたんだな」と実感しました。

・オンエア、完成品を見て・・・

あの長時間の撮影は何だったんだよー!」と叫びたくなることもありました 笑

要は撮影したであろう素材の殆どが使われていなかったということ・・・。CMだと15秒、30秒にまとめないといけないのでなおそう思うかもしれません。

でもこんな短い映像作品を作るにしてもあんな長時間の撮影に及ぶんだなと、裏側の大変さを知ることができたのは良い経験です。

何より電車に乗った時の広告ディスプレイやテレビを観ていた時に自分が出演している映像が流れるなんてそうそう経験できるものではありませんよね。

④ 待遇面

最後にこれ。少なくとも私が関わったものはちゃんと「出演者」として扱ってくれたと思っています。なぜ待ち時間が長いのかも、この人にはカメラの前で演技以外はやらせないと演技以外の仕事はやらせるつもりはなかったからとも言えます。

体調面も気にしてくれて「もしも撮影中に気分が悪くなったら遠慮なく言ってください。撮影が中断するのは申し訳ないとか思わないでください。撮影中に出演者の身に何かある方が問題なので」と気遣いも見せてくれました。

集合時間が午前で、午後まで及ぶ撮影には弁当が出ましたし、休憩中は飲料やちょっとしたお菓子も配られました。

以前、書いた記事では「出演者だからと言って演技に専念できる待遇って実はそうそうない」と書いたこともあるのですが、このCMやプロモーション映像などの撮影をする仕事に関しては演技以外の仕事をやる事はなかったです。

なぜかそうなのかと言うと、
ある程度のまともな予算が組まれて撮影されているからでしょう。

テレビに、街中の広告ディスプレイにある映像が流れるとなれば大企業のCMであることも多いです。

資金のある大企業が撮影に絡んでいる=資金もまともに投入されるということです。

そもそも映像制作会社に依頼してカメラマン、監督やらのスタッフも数十人と動員されている撮影なんてその時点でそれなりに資金がないと出来ませんよね。

そんな体制であれば必然的に業務もしっかり分担されているのです。
だから金銭面でも脇役・エキストラでも日雇いのアルバイトをしたくらいのギャラが貰えることもありますよ。私は事務所から俳優の卵にお仕事を経験させようという計らいで来た仕事もあるので、ギャラはないこともありましたがそういう案件もありました。

撮影も映画やドラマではないので一日で終わりますし、こんな仕事が他のアルバイトみたいに毎週あるならそれだけで食っていくのも可能なんじゃないでしょうか。まぁ、そんな撮影の仕事も売れっ子でもない限りホイホイやって来ることはないので、無理でしょうが。

その売れっ子も、ある一企業のCM出演のギャラが数百、一千万円?などとよく耳にしますが資金力ある大企業なら自社の商品のCM制作のために好感度高い、超有名人を起用するためにそのくらいの報酬を出すのもあながち間違ってないと思います。

俳優とは高度な演技力が求められる仕事、だと世間的には思われがちですがそんな演技が求められる舞台や映画の仕事よりも下手したら報酬が高いすらあります。めちゃくちゃ儲けている大企業が資金を出しているわけでありますし。

むしろ映画や舞台は作ってもどこまで儲かるのか不透明、ってか余程の人気がある原作、監督が作らないと、有名俳優が出演していないと大体は赤字でこの行為自体が一種の賭けみたいなものですので資金集めには苦労することでしょう。

ここがちょっと悲しい所かもしれません。
必死で演技を勉強してきたのに待遇面でしっかりしているのが仕事が数日前に決まることもあったり、当日まで何をさせられるかも分からないこともあるのでそこまで高度な演技が求められないある企業の映像作品の撮影というのが。

個人的には大した演技をしていないと思っていても
「君、素晴らしいね〜」と褒められることもあります 笑

俳優がやりたいのはやっぱり映画や舞台の仕事(現にやっていて最高に楽しいのはこっち)、何よりそれらを観て憧れて俳優になりたいと思ったことでしょうが、こんな現実がありますので自分のやりたい事ばかりに拘らずに仕事を選んでいきましょう。

・・・というような感じで締めたいと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました。

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