「待つ」「受け身」では駄目だという本当の意味

演劇コラム

俳優・声優・芸能界を目指す人であれば一度は似たような言葉を言われた事はあるのではないでしょうか?

待っている、受け身の姿勢ではこの世界では仕事は来ないと。だから積極的に自分を売り込んだ経験がある人もいると思いますが、

その売り込む方向が身内、関係者だけでは駄目なのです。

なぜかというとそれでたとえ作品の出演が決まっても、じゃあ誰に宣伝しようとなってもここでも身内(家族、友人、同期、先輩、後輩など)しか知らせる相手がいないのであれば、実はそれってあんまり自分の名前が世に広まらないってことなんですよね。

これがもしも舞台でチケットノルマも課せられたらどうでしょうか?普通に生活している上で仲を深めた人達だけに宣伝すればそのノルマを達成できるくらいの交友範囲はあるのか?

多くはたとえ宣伝できる人数はたくさんいたとしてもほとんどがチケットを買ってくれない、観に来てくれない場合も多いことでしょう。

なぜ売れないのか?と言われたらあなたの「ファン」ではないからです。

このようにどうすればチケットを売り切る事ができるの?となった時に今まで全く無関心であった「ビジネス」の知識が必要になってくるのです。

それに気がついて、だからこうして発信しているというのもありますが、個人的には演技の勉強と同じくらいこのビジネスの知識も重要な位置づけだと捉えているのですが専門学校、養成所では教えないし、その必要性についても訴える事なく、ビジネスの「ビ」の字も出てこないまま卒業させます。が、わたくしが一番伝えたい事は、

「俳優・声優・芸能人は個人事業主である」

です。これは何度も繰り返し言っていきたいと思います。

今、ウィキペディアをみてみたらこちらにもそう書かれていますね。

声優は所属事務所からの基本給というものは存在せず[注 29]、各人の仕事実績によるギャランティ(報酬金)が収入となる個人事業者である。

わたくしが高校時代に読んだ時はそういう記述はなかったと記憶しており、ただ厳しい世界、一握りの人しか成功しないとしか書かれていなかったと思います。

 

それでも、こんな事をいきなり言われてもピンとこない、納得できない人もいると思いますが、もしもこれらの人達が事務所や劇団に雇われている身であれば毎月給料が振り込まれないといけないのです。雇うという言葉はそういう意味になります。

しかしこの世界、多くは引用文の通り成果報酬です。どこかで行われる演者募集の求人にエントリーして役を勝ち取る、または出演お願いしますと依頼が来る、それで初めてお金が入ってきます。

このような形でお金を稼ぐのだから「個人事業主」だと言えるのです。

せいぜい事務所という名の派遣会社に登録して、案件が来たらその登録者へ一斉に連絡をして仕事を受けるかどうか決めてもらうという派遣のアルバイトという表現でも良いかもしれませんが、芸能界の場合はオーディションに合格しなければいけないという壁があるので、案件が来ても必ず仕事させてもらえるとは限らないのが厳しいところです。

声優志望者は専門学校に高い学費を2年間払っているのに、目指しているのが仕事の数があまりにも少ない派遣のアルバイトというのが実態なのですからなんて割りに合わないのでしょう。

卒業後は事務所、劇団に所属できたとしてもフリーターですよ。そう考えると笑ってしまいます。

専門学校は演技が上手くなる事しか教えないようなので、この世界で生き残っていくための現実的な生存戦略などは教えない、だったらもっと安い料金で演技上達法を教えてくれるところはあるよと助言したいですね。

 

こんないつ仕事がもらえるかも分からない状態をずっと受け入れていたらいつまでも売れない、稼げないのは当然です。

だから「個人事業主」という自覚を持ち自ら動く、自分で売る商品を考えて、それを自分で宣伝して、売る、そのためにはその「個人事業主」としての心得、「ビジネス」の勉強が必要です。

もちろん宣伝する相手は身内ではなく顔も名前も、どこに住んでいるかも分からない大勢の一般人です。

その人達に向けて売り込む、それすなわち「自分一人でもお金を稼げる力を身につける事」を意味します。

 

この行動が本来の「待つ」「受け身」の姿勢ではこの世界ではやっていけないという本当の意味です。

もしも専門学校に払うお金をこの「ビジネス」の勉強のために費やす事ができるのならそれは素晴らしい「自己投資」になります。

「自己投資」とは使ったお金が後にその時、使った分よりも大きな額となって返って来る可能性が高いお金の使い方です。

専門学校へ行って演技を学ぶというのもその「自己投資」に本来なら該当するのですが、それはこの世界が演技が上手い、実力が確かな人しか仕事が来ないというしっかりと勉強、訓練してきた人が優遇されていたのならの話です。

現状、それよりも別の事が優先されてこの世界の仕事は回っているようなので、2年間という月日を全て演技の勉強に費やす価値はないと言っても過言ではありません。

この世界で稼ぎたいのであれば、

「個人事業主」という自覚を持ち、

演技の他にも「ビジネス」「一人でお金を稼ぐ」スキルを身につける必要がある。

これが一番伝えたい事です。おそらくこんな認識を持ってこの世界を目指す人はいないに等しいと思います。

それはその前の「学校教育」の段階で私達は就職する事を前提とした教育を受けており、「個人事業主」「一人でお金を稼ぐ」そんな人間になりたいと思うようには育てないからです。思うとしたら就職後に違和感を覚えて、脱サラした、そんな人はよく聞きます。

 

この明らかなミスマッチのおかげで脱落する人しか周りを見てもいないのです。

この欠陥を是正するために、時間はかかるかもしれませんがこのような認識を今後も広めていきたいと思います。

 

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