声優になれる確率はどのくらいか?〜この世界を目指す『リスク』について考えてみる〜

演劇コラム

いきなりですが、

『株を購入する』『起業する』

という言葉を聞くときっと多くの人は

「損するのが怖い」「なんだか大変そうで自分にはできなさそう」

なんてネガティブなイメージを持っており自発的にやるのはもちろん、たとえ誘われても断る人はけっこう居ると思われます。

それだけ、

その行為に対してリスクが大きいと判断してのことでしょう。

対して、

『声優を目指す』

この言葉を聞くと、

「夢があっていいね」「なれたら絶対に楽しそう」

と、誰でも出来る仕事ではないとはいえどちらかと言えばポジティブなイメージが先行している場合もあります。

実際に私が専門学校に通っていた頃、かなりお気楽に通っている人が大多数でした。まるで学校で勉強して卒業すれば誰でも声優になれると思い込んでいるくらいに・・・。

この点は専門学校側の宣伝もそう思わせるように展開しているのでそんな人達が集まってしまうのも仕方がない側面もありますが😓

が、果たしてそんな緩い気持ちで目指して良い世界なのか?

この記事では感情的にではなく数値としてこの世界を目指す『リスク』を解説していこうと思います。

これを読んでいただき『声優を目指す』という行為の美味しい所だけではなく、どんな『リスク』が潜んでいるのかも認識していってほしいと思います。

『リスク』という言葉を正しく捉えよう

先ずはこの『リスク』という言葉。

危ないとか、行動を起こしたことによる被るかもしれない被害など『危険』をイメージする方も多いかと思いますが、こういうちょっと別の捉え方もできます。

それが、

自分が期待している結果に対して、どれだけ下振れがあるのか?

という見方。

どういうことかと言うと、

私が声優になるぞ!と意気込み行動に起こした時に思い浮かぶ成功図はとても輝かしいものでした。

私が望んだ結果は・・・、

実力が認められて様々な作品に出演して、声だけの仕事だけで生活できるようになっている、

これが期待していた最高の結果です。

対して人生、そう事が上手く運ぶわけがないのが常です。
この期待値に対して、想定できる自分が望んでいない最悪の結果は何か?

その違いが大きければ大きいほど『リスク』は高いと言うことができます。

ここで想定できる最悪の結果は、

声優になれず、生活のために諦めて学校や養成所で勉強してきたこととは全く関係のない仕事に就く、

これが一番望んでいない結果だと思います。

ご覧の通り最大値に対して最低の結果には天と地の差があります。

これはかなりの『リスク』が高い行動になります。

ぶっちゃけ言うとこの『リスク』を受け入れることができないのであれば最初から足を踏み入れない方が賢明だと申し上げることもできます。

或いはこうならないために何かしらの保険や、それを補えるような策を練っておく、こんな準備も必要になってくるわけですね。

成功するまで続ければいいじゃない!なんて言葉も聞こえてきそうですが、では・・・、

演劇、芸能活動による収入だけで生活できるようになれる確率ってどのくらいなの?

というこの記事の本題に移っていきましょう。

とは言ってもこんな思考はまだ高校も卒業していない歳の段階からではなかなか難しいと思います。

この時点では『成功事例』ばかりを見て胸をときめかせている頃でしょうから。(その成功事例の下には何万という屍が山となっていることはまだ知らず・・・)

ではその『成功事例』になれる可能性ってどのくらいなのか?
ちょっと考えてみました。

ここでいう『成功事例』とは上記の通り演劇、芸能活動によって入ってくる収入だけで生活できるです。

私の身の周りを見渡してみますと・・・、

私の同期は専門学校、養成所で合わせて100人ほどいました。
(専門80人、養成所20人)

もちろん中には名前しか知らない、話したことはあまりない人も含まれていますが。

その中でこの条件を満たした人は残念ながら0人だと思われます。
そもそも専門を卒業した段階で半分くらいの人はなんと養成所など次のステップには進みませんでした。別の進路や就職を希望します。中には自分のやりたいことがよく分からないとただ卒業しただけの人もいましたし、卒業できず中退した人も10人以上はいたと記憶しています。

その専門の同期とは数年後に年に一回くらいのペースで会って近況を話し合ったりしていましたが、同期で講師陣も含めて一番期待されていた人ですら事務所所属が叶わず諦めていたので、じゃあもう誰も成し遂げられなかった可能性が高いかなと見込みました。

なれたのなら有名になれて自然と自分の耳に入ってくるでしょうしね。

ちなみに収入は生活できるレベルじゃないけど、とりあえず演劇活動を続けられている人にレベルを落とせば、

10人くらいはいます。

ここで範囲を同期から卒業後に知り合った方達にまで広げれば、プラス100人ほどいて200人にまで増えるのですが(様々なワークショップや演劇イベントに足を運んだため知り合えた方であればけっこういました)

ここでようやく一人、この条件にかなり近い人を見つけました!

その人はメジャーな作品出演はないのですが、SNSを駆使してフォロワーを一万人弱増やしてファンとの交流会を定期的に開いてファンから直接、課金してもらっている方でした。

ということで200人くらい俳優・声優、志望者の知り合いがいれば一人はそれなりに売れている人が現れるんじゃないの?となりました。

200分の1=確率は0.5%です。

面白いことにここに専門、養成所の先輩と後輩を加えればさらに200弱増えるのですが、そこにも一人そこそこ売れている先輩がいるので、

200人いる先輩、後輩の中にも一人いる、
この確率は案外、的外れな数字ではないかもしれません。

他にも検索エンジンで『声優になれる確率』なんていうキーワードが候補として出てくるのですが、

声優になりたいと強く願っている方は、全国で30万人ほど存在すると言われてます。その内、声優としてデビューできる人数は1万人前後と言われています。
そのため、声優としてデビューできる確率は約3%という事になります。
実際に声優になるための行動を取っている人は30万人以下である可能性が高いため、実際にデビューできる確率としては3%より多少高いと考えると良いでしょう。

声のメディア』より引用

おそらく毎年30万人ほどの志望者がいるというのは、いくらなんでも多すぎだと思うのでこれまでの数十年の歴史の中でおよそこのくらいの人が憧れを抱いたという数字ではないでしょうか。

その中で一万ほどの人がデビューできた。

その『デビューできた』だけに絞れば3%くらいなんじゃないの?って数字ですね。なら事務所、劇団に正式に所属できたであればもっと高いでしょうか。

他の記事をみても30万人の志望者がいてデビューできるたのは1万人前後という数字を引き合いにしているので概ねこの認識なんだと思います。

ちなみに私も最大値の結果は得られなかったけど、
俳優・声優として舞台やカメラ・マイクの前に立てたので一応、この3%には入れたことになりますが、肌感覚としてそこそこの素質と人並み以上の努力はして巡り合わせが良ければ一度くらいはやらせてもらえると思うので、もっと高いような気はします。

本当に『一度でも作品出演、演劇関係のお仕事ができた』をデビューしたの定義にするならまぁまぁ叶うと思いますよ。

ただそれがコンスタントに入ってくる、長い期間に渡って継続される、プラス経済的な恩恵まで求めると1%にも満たない確率になるわけです。

いずれにせよどうあがいても高い数字が出てくることはないのは間違いないので、厳しい世界だとは分かってはいたけど、実際はどんなものなのか漠然としている方は少しでも分かりやすい数字で見てみてそのイメージが明確になれば幸いでございます。

これは音楽など別の分野でも似たり寄ったりの話だと思います。そんなここだけはなりやすいよなんてことはないことでしょう。

 

ということで私の身の回りや一般的な認識を照らし合わせたら、

声優のお仕事が貰える(デビューできた)可能性は3%よりちょっと高いくらい(5%くらい?)、

そのデビューできた人の中から演劇・芸能活動だけの収入で生活できるくらいのレベルに持っていける人は約200人に一人=0.5%

になります。

この確率は100人ほどが集まる専門学校1校からでさえ一人も夢を叶えられる人はいないレベルです。

現にデビューできた卒業生の紹介が10年以上前で止まっている学校も珍しくないので、毎年デビューできた卒業生を輩出するのは難しい状況なんだと思います。

こんな確率が低い目標を成し遂げようとしているのに、学生気分が抜けずワイワイしながら専門学校や養成所に通っている暇なんてないってことですね。

今はもうだいぶその危険性が浸透してきている実感はありますが、私がまだ学生だった頃は実力をつければ自分だってなれるはず!そんな希望を持っていた人も多かったので、そんな個人の努力だけではどうしようもない壁があることをしっかり意識した上で目指していってほしいと思います。

あとから知って後悔する人がいなくなることを願っています。

ではここまでお読みいただきありがとうございました。

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