【演劇エクササイズ・ステータス②】外面的ステータスと内面的ステータス

演技上達法〜基礎編〜

以前、書いた演劇エクササイズに「ステータス」という記事がありました。

【上手い演技への手順】「ステータス」

この記事は初心者向けに書いたものなのですが今回は、そこからさらに発展した中級・上級者向けのエクササイズの記事をご紹介します

簡単におさらい・演劇における「ステータス」とは?

演劇における「ステータス」とは「役の社会的地位、身分」のことを指します。これは日常生活でも無意識にいわば「演じ分けている」はずです。

当然のように職場の上司と学生時代の同級生とでは接する時の態度は変わるはずですよね。それを例えば数字で表すと・・・、

上司と接する時は自分のステータスは「1」で上司のステータスは「10」
しかし友人と接する時の自分のステータスは「5」で友人も「5」

数字が高ければステータは高い、低ければもちろんステータスは低いです。これは上司の前では腰を低く、逆に数字が同じである友人の前では互いに対等に、気兼ねなく接することができることを意味しています。

この原理は演劇においても適用されないわけがないということです。この辺はまさに普段の生活でもやっていることなので言われなくても出来るかもしれませんが、記事の最後ではさらに深い所にも言及して締めています。

それが「外面的ステータス」と「内面的ステータス」

先ほど説明したのは「外面的ステータス」になります。が、人間関係というのはそう単純なものではありません。

いくら外面上は「上司」「部下」の関係性で上司の方がステータスが上だとしても、その部下が上司のことを心から尊敬していない、むしろ面倒な仕事は全部、部下に押し付けて上司は一体、何をしているのか分からない、そんな評価をしているのであれば内心は「見下している」可能性があります。

つまり内面的ステータスでは外面的ステータスほど数字の開き(10と1)はないと言えると思います。

上司の話を聞きながら「あ〜あ。また面倒な話をしてきたよ」

と心の中で思っているとしたら果たして本当にこの二人の関係性は上司の方が偉いのか?疑問を持つはずです。

このように外見から見えてくる関係性と実際の内心、思っていることが一致しないことも多々あると言えます。

そして現実としてその内心、思っていることが「本音」と言えて外見から見えてくる関係性は「虚像」になります。

ここまで読めば「外面的ステータス」から見えてくる関係性が必ずしも真実ではないとはご理解してくれたと思います。

他にもさらにこの人間関係を突き詰めるなら、その人物自体のステータスは普段、幾つなのか?というのも考える必要があります。ここまでは単に相手によって自分のステータス、振る舞いは変わるということでしたがそのニュアンスは人によって千差万別です。

その違いがなぜ出るのかはその人物自体のデフォルトのステータスです。ここをいくつかに設定するかによってステータスの上下の幅が変わり、本人的には丁重に接しているつもりでも、ある他者によっては馴れ馴れしい・・・なんて感想も漏れることでしょう。

個人的にはこのデフォルトのステータスこそ、その人の年齢や肩書き、社会的なしがらみや世間体に囚われない真のステータス=「内面的ステータス」と定義したいです。その隠れている、隠している本音や中身こそが真実であるからという根拠です。

そこで今回ご紹介するエクササイズは・・・、

外面的ステータスと内面的ステータスを意識してやってみる

上記の記事を読み返してみて中級、上級者向けに発展したエクササイズを思いつきました。

一回目の記事では初心者向けということで「外面的ステータス」だけを意識してやらせる内容でした。

場所は「新幹線の待合室」で1〜10の数字が記されたトランプをランダムで配り、その数字に合ったステータスで一定時間、その場所とステータスを意識して振る舞ってくださいというエクササイズです。ここに「内面的ステータス」も付け加えてみましょう。

ここのポイントとして先に説明した通りこの「内面的ステータス」がその人のデフォルトのステータスということもお忘れずに。あと基本ステータスという縛りがあるだけで「自分」ベースで演じてもらって良いです。

最初に配ったトランプが「外面的ステータス」で二枚目に配ったトランプが「内面的ステータス」という流れになります。

これでどいう風に変わるかというと例えば・・・、
「外面的ステータス」と「内面的ステータス」が一致している人物はどんな人なのか?と考えた時に・・・、

外面的・内面的ステータスが共に最高の「10」と指定されたら、
分かりやすいのは「天皇陛下」のような人物です 笑

なぜなら外面はもう日本の象徴と言われるような存在、そして一人の人間としても尊敬できる、外見と中身が数字に見合っている存在ということになります。

逆に「外面的ステータス」は高い(10)けど「内面的ステータス」は低い(1)と・・・、

上っ面だけ偉そうで中身が薄っぺらい小心者、先ほどの部下から敬われない上司というのが典型かもしれません。他にも緊急事態に見舞われると途端に弱虫になる、真っ先に逃げるような人であったり・・・。

さて、では演じる上で面白くなってくるのはこのパターンではないでしょうか?

「外面的ステータス」は低い(1)けど「内面的ステータス」は高い(10)人って!?

能ある鷹は爪を隠す・・・かなり出来る人物と言えるかもしれませんね。

例えば身分を偽って潜入捜査を行なっている警察やスパイであったり・・・、何か大きな陰謀を企てている人など、上手く表現できていれば観客から見たらかなり気になる人物に映るでしょう。

「えぇ〜この人が犯人だったの!?」と思わせれば大成功ではないでしょうか 笑

悪人じゃなくても、ヒーローというのも普段は大人しくしているけどここぞという時に参上して窮地を助けるというのが一つお決まりです。それこそ大きな災害が起こった時に臆することなく人助けをできる人だったら素晴らしいですよね。

いざという時に助けてくれる人や何か、とんでもない野望を秘めている、優れた能力を隠している人がここに該当する人物ではないでしょうか。

微妙な立ち位置を演じる時に大切なこと

ここまでは極端な例、1か10で解説したので分かりやすいですが、ここでも一回目の記事と変わらず問題なのは数字が中間に位置する場合はどうすれば良いのか?ということ。そんな数字ほど重要になってくる設定があります。

外面的ステータス(4)内面的ステータス(6)なんて来た時には、なんだこれは、どうすれば・・・なんて思うでしょうw

この場合、内面的ステータス=デフォルトのステータスが(6)で表に出ている態度が(4)でちょっとだけ普段より低いというわけで、要はその根拠を考えれば良いわけですが、その根拠となる具体的な設定事項はその人物が置かれている「状況」を考えるです。

これ、初心者にはまだ難しいということで一回目の記事では省いたのですが、このエクササイズをもっとやりやすくするためにはその人物の「状況」や「目的」も決めてしまうとかなり演じやすくなります。

ここでは「新幹線乗り場の待合室」という場所を設定しておりますが、自分はなぜ新幹線に乗ろうとしているのか?目的地は?誰か他に同行者、これから合流する人はいないのか?その辺りを決めればどうすれば良いのか分からないという状態から脱することができてその場に居やすくなります。

そこでデフォルト、内面的ステータス(6)の人が今は外見では(4)くらいと僅かな差があるのは、乗り物に乗るといつも酔ってしまうから気が進まないからやや気分が落ち込んでいる、こう決めてしまえば外見をどう見せれば良いのかが見えてきます。

他にも内面的ステータス(3)の人が今は外面的ステータスが(6)となっていた場合だと、普段は家に引きこもっているが今日は今から大好きなアイドルのライブを観に遠出するから気分が高揚している、だからいつもよりテンションが高い、こう決めておけばグンとやりやすくなります。

またこの数字に差はなく中間の数字の場合は特段、気分が悪い、これから楽しみなことが待っている状況ではないとも言えるかもしれませんね。仕事で月に何回か、新幹線に乗って行き来している、毎年恒例の帰省など。

ここで気がついてほしいのは、ステータスは相手だけではなく、状況によっても変わるということですね。

最初は相手によってステータスは変わると言いながらエクササイズでは積極的に相手とは接しないのはここを理解してほしいからです。

台本を貰った役作りも同じで、こんな部分をどう決めるかでその俳優の個性が出てくるのであまり疎かにすると印象に残る俳優にはなれないのでしっかりと作り込みましょう。

こんな感じで演じてもらいある程度時間が経ったら(10分ほど)終了して観ている側は誰がどのくらいのステータスだったのかを予想してみてください。今回はさらに「内面的ステータス」も当ててもらいますのでより洞察力が観ている側にも求められます。

ちなみに観ている側にそれぞれのステータスを当ててもらうためには演じる側も一緒にやっている人をよく観察してこの人のステータスはどうなんだろう?と考えてみる必要はあると思います。その結果、少し振る舞いを微調整しようと思えてくるかもしれません。

ちょっと難しいと判断したのなら話しかけてみてよりヒントを得るも構いませんが、そこではしっかりと相応しい動機を持って話しかけてください。友達、知り合いだから話しかけたなど。そうなったら話しかけられた側もある程度はその設定に乗って合わせてください(「多分、人違いです」とは返さないこと)

このエクササイズの目的は演じる側は「その人物の表と裏を意識して演じてみる」観る側は「人間観察、外見からその人物の裏の背景を想像する能力を鍛える」のが主な目的です。

是非、一つのゲームとしてでも面白いと思うのでやってみてくださいませ。では以上になります。ありがとうございました。

 

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