今回は「身体と発声」について触れていきたいと思います。これを読めば演技を上達するためにはいかにこの二つのキーワードが大事かという事が分かるようになります。
身体と発声の重要性
この二つは演技を学ぶ上で切っても切り離せない関係です。これらと同時に、並行して演技を教わる事が望ましいです。
今までは演技に関してのメニューを教えてきました。
しかしその間、間にこの発声について、身体についてを盛り込むのが理想的なんです。が、そうなるとさすがに一人の講師がこれらの分野にも精通しているかと言われると難しい場合もあります。
ですのでしっかりと環境が整った養成所などであれば演技、発声、身体これら3つの専門家が教える事になり最低でも3人体制で教えています。
専門学校でも授業ごとに先生が変わり、何十人という方々に教わる事が多いですがこの発声、身体についてどれだけ手が抜けない分野として教えているかと言われたらちょっと疑問に思っています。少なくとも僕の通っていた専門学校では発声のみに特化した授業はなく、身体についても1年生のみで2年生に進級した時には無くなりました。
フリートーク力を身に付けようとか、洋画の吹き替え、朗読など様々な授業があったものの、全ての表現方法において何が支えているかと言われたら健康な身体と正しい発声です。そんな意識はなく表面的には楽しい事をやっていてもその基本が疎かになっていたらあまりやる意味がありません。
では、それらをしっかりと鍛えていないとどんな弊害が起きるのかと言うと・・・。
正しい発声を身に付けていないと直ぐに喉をからす。
これは自分も経験済みです。専門学校時代は発声のみに重点をおいた授業がなかったのでちょっと絶叫するような台詞を言うと直ぐにガラガラになりました。
他にも高音な悲鳴を叫んだら超音波にしか聞こえず、耳が痛くなり観客を不愉快にさせるだろうと思われる人も何人か見ています。
今振り返ってみるとその発声について悩んでいる人ってけっこう多かったんじゃないかなって思いますね。長時間の稽古にも耐えるためにも無理をさせない正しい発声法というのは必須な技術です。
それを教えずとりあえず飽きさせない、楽しいだけの授業だけだった専門時代はプロを育てる場所としては不十分だと言わざるを得ないですね。今は改善されてカリキュラムが変わっている可能性もあったり、学校によってはしっかり教えている所もあるでしょうから一概に専門学校の教育は駄目だとは言えませんが。
太字で強調しましたが正しい、無理のない発声法を身に付けているというのはそれだけで高度な技術です。
2年、3年という時間を費やしてようやく体得できる技術と言ってもいいです。しかもそれを誰に教わるかというのも重要です。
別の記事でも似たような事を書きましたが、誰でも良いというわけでもないんですね〜。それで3人ほど教える先生を変えたという人も知り合いにいました。運悪く教え方が下手、相性が合わないという人と当たってしまいなかなか上達しないという場合もあるのが難しいところ。
そういう意味では素晴らしい師匠と巡り会えるか否かにもかかっているので本当に「運」に左右されるんですよね。
極度の緊張状態、身体に余計な力が入って芝居をすると動きが気持ち悪くなる。
先ず必要なのは健康な体、これは演劇に限らずどんな事をするにしても言えるでしょう。
もちろん正しい発声を支えている土台はこの身体です。この身体のある部分に問題を抱えているだけで上手く声を出せないなんて事も。
身体の問題というのは怪我とか障害という大袈裟なものでなくても、よくある例としては身体に余計な力が入っているという事ですね。これは誰もが一度は経験する事でしょう。演劇というのは大勢の人前でパフォーマンスをします。人によっては人前で喋るなんてもってのほかな人もいるでしょうし、それを望んでやるにしても初めての場合は誰でも緊張しますよね。しかし俳優はそんな緊張していつも通りの動きができなくなって当然という環境で、平然を保ちながら舞台上で演技をしなければいけないので身体のメンテナスというのは欠かせません。
そういった思わしくない状態で演技をすると、どんな事が起きるかというと身体が力んでいるという事は硬直していると言えるので、覚えた台詞を言うので精一杯で首より下が動かず首だけで突き出たままの状態が数分続くとか、心理的に何かしらのリアクションがあって然るべきシーンで無反応で気持ち悪いなど、文章より実際に見た方が分かりやすいのでピンとこないかもしれませんが、要は自然な動きではない、人間として有り得ない、ぎこちない動きをする事が多いってことです。
なんでこんな現象が起きるのかはさっきから言っているように緊張からくる力み、台詞がまだ完全に覚え切れておらず覚えたての台詞に縛られているのが主な要因ですので経験を積み重ねていけばある程度は解消できる部分もありますが、同時にそういう時というのは身体に余計な力が入っているというのをしつこく教えるのが望ましいです。主に肩に力が入っている場合が多かったりします。
内面の状態は身体とリンクしますので、緊張している=身体のどこかに余計な力が入っていると思ってそれを察知したら深呼吸するなり、リラックスするように心がければそれだけで違います。
そんな「あっ身体に力が入っている、リラックス、リラックス」なんて自己点検できるようになるのも訓練、そう自覚できるように感覚を研ぎ澄ますなどある程度の時間がかかります。最初は自覚できずに講師の方に指摘してもらわないと気付かないでしょう。
演技をするのにふさわしい身体、状態にもっていけるようにする。これができないと良いパフォーマンスを維持するのは難しいです。
まとめ
発声、身体の事も時間をかけて勉強するべきだと、その重要性だけを言いましたがではどのような事を学ぶのか、その具体的な事は残念ながら僕からは言わない方が良いかなと思っております。言えないというのが正しですかね。
なぜなら、冒頭で言った通りそれらの専門家に教わるのが一番だからです。生半可な知識だけでは教えられない領域ですかね。軽いアドバイスくらいならできるかもしれませんが。
このように一口に演技を学ぶと言ってもプロを目指すなら学ばなければいけない事がたくさんあり膨大な時間がかかります。僕には本格的に教える事ができないと言っても、せっかく演劇を学ぶならこれらのことも勉強していかないとダメなんだよということだけは伝えたいですね。
ですので演技のワークショップ、講義で発声、身体のみに重点を置く、時間をかけるものがあれば参加してみるのがいいと思います(ちなみに僕に教えてくれた先生は既に年齢や家庭の事情により引退しています・・・)
台本を与えられて演技をするだけではなくこの項目も凄く大事だということだけは頭に入れておくようにしてください。
では最後までお読み頂きありがとうございます。
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