俳優を志している、活動している方であればこんな壁にぶち当たるのではないでしょうか?
俳優として知名度を上げる、人気を得るためには作品出演を果たさないといけない、
けど、
作品出演を果たすにはそれが大きな企画、商業ベースの作品ほど人気・知名度がなければ選ばれることはない、のです。
「俳優としての実績を積み上げていきたいので何らかの作品に出たいです」
と言っても、
「人気なくてお客さん呼べないならなかなか厳しいだろうね〜」
と言われたら、その人気を獲得するためにも作品出演したいのに、人気・知名度がないと出られないって言うならどうすればいいねんと思わないでしょうか?
こうなってくると残された方法は、
演出家・監督などキャスティングの権限を持っている人や、事務所に気に入られるしかありません。
が、この構図は俳優側があまりにも弱い立場になってしまいます。
この「演劇界で活躍していきたい」という大きな夢を盾にされたら従順にするしかありません。
だからこの世界では出演者のパワハラやセクハラ被害が起きやすいのですね・・・。
しかし今やSNS時代です。
個人で発信できるようになったので、そこから自分の魅力を伝えて人気を獲得すれば道が開かれるかもしれない・・・とは言うものの、
俳優ならではの発信ってなんだろう?と考えた時にここまでも壁にぶち当たります。
音楽、ミュージシャンであれば自分で曲作りができなくても他人の、人気ある曲を「演奏してみた」或いは「歌ってみた」は手頃にできます。
ダンサーだって「踊ってみた」があります。
イラストや漫画・小説だって投稿サイトに公開して評価されたら出版へ〜という話はよくあることです。
お笑いだって数分のネタを動画として上げたりすることはできるでしょう。
じゃあ、俳優・演劇ならではの発信は?と言われたら「演技」を披露するしかないわけですが、そうなると「台本」を用意しないとな〜となりますよね・・・。
一般的に台本を用意する、ましてや書くなんて行為は俳優の仕事ではありませんし私は演じたいのであって書きたいわけではないと誰もが思うでしょう。
しかも劇作、脚本を書くとは俳優とはまた違った能力・才能を求められるので誰でも気軽にできるものではありません。学校や養成所では教わることもありません。
はい、なんと演劇・俳優に関しては何を発信すれば良いの?と立ち止まってしまうのです。
さらになんとか台本を用意をするにしてもそれは「他者の著作物」になりますので許可を得ないといけません。それで「朗読」動画を上げている人の中に許可を取っていない人もいて問題になったこともありますよね。正式な手続きを経て許可してもらうにも使用料を払うことになります(音楽の「演奏してみた」なども違反行為なのですがYouTubeなどの主要サイトでは包括契約を結んでいるのでガイドライン通りに投稿すれば問題ありませんし、利益を得ることを目的としなければ大勢が見られる場で演奏するのはOKです)
で、まだまだ壁はありまして・・・台本はなんとか用意できそうだとなっても、まさか上演すると一時間、二時間はかかる台本を丸々、披露するなんてことはしませんよね・・・😓
演奏も歌も踊りも五分もあれば、一人でも魅力が伝わる動画一本が作れることでしょう。それに比べたら演劇は動画時間一時間とか表示されていたらそれだけで長い!と観る気が失せますし、登場人物が複数いるなら一人でできないじゃん!となります。
他の分野のエンタメ動画は一人でも、五分以内でも十分に惹きつけられるものが作れるのに、演劇はそんな短い時間では相当、頭を使って練り込まないと厳しいんですし、演技は基本は一人でやるものではないので一人というのも同じく厳しいです。
こうってくるとボイスサンプル的な短い台詞を用意して上げることしかできないと思うのですが、それも製作者からしたら良い判断材料になるのかもしれないが、一般人からしたらそれを聴いて何が面白いの?ってなりますよね。(方言で話したり、あるシチュエーションを想定した甘い会話など需要がある声のコンテンツもあるにはある)
現実的なのは声優として、数十分程度のラジオドラマを上げる(実写だともはやドラマ制作と変わらないのでお金も時間もかかる)のが良いのでしょうけど、重ねて面白い台本はどうする?フリー台本だとそこまでのクオリティは求められない、誰かに執筆依頼をするなら相応のお金がかかるだろう・・・と、もはや個人で発信する域をやや超えていて自身がプロデュース、出演も務める大掛かりな作業にどうしてもなってしまうのですよね。
これはテレビでも同じことでしょう。音楽だったら番組内で五分時間をもらって一曲演奏、歌うことができたらそれで認知する人が増えるきっかけになりますが、演劇だと一つの作品を届けるだけでも最低三十分or一時間の枠を三ヶ月間確保したり、二時間の枠を取って映画を流してようやく一つの作品を届けられるので時間がかかります
と、演劇の難しいところって舞台上でカメラ・マイクの前で演じたい人はたくさんいるのに、その人達だけを集めてもエクササイズ・即興はできても、「舞台」「映画」などは作ることはできない上に時間もかかることだなと改めて演劇という分野を見つめ直してみて痛感しました。
もしかしたら演者よりもまず大事なのは台本を書く、劇作家・脚本家とそれをまとめる、指揮する演出家・監督だなと強く思うようになりました。この二人がいないとじゃあ出演者は誰にしよう?という流れにならないわけだし。
その作家や演出家・監督をやりたい、志している人達も中には「良い俳優いないかな〜」と思っているかもしれない。
この異なる立場の人達が集まる、繋がらないと『演劇』コンテンツをスムーズに作ることはできないのなら、これらの立場の人達が交流できる、繋がる場をもっと作っていかないといけないんじゃないですかね?
『演劇』コンテンツは俳優だけでは作れない、だから個人で発信できる時代でも俳優だけは他の分野と比べて俳優ならではの発信ができないのはなんだか悲しいです。
もう一つ、なぜ『演劇』だけ?という意味では、
去年の12月もMー1グランプリで大いに笑わせてもらいました。この日ばかりは普段テレビに出ているとか、知名度関係なく実力がトップクラスの漫才が面白いコンビだけにスポットライトが当たります。一万組の参加者の中から勝ち上がってきた強者たちです。
そんなお笑い界の一大イベント、お笑いの純粋な面白さが存分に伝わる、お笑い分野の人気向上にも大いに貢献していることでしょう。
では『演劇』にこのような、演劇の本質的な良さが伝わるイベントはありますか?って聞かれるとなんだろうね?となりませんかね。
演劇だって毎年色んなイベントは開かれているのでしょうけど、その広まりは狭い界隈で少なくともMー1ほど一般の人には届いていませんよね。(テレビを活用できないから仕方がないですけど)
アカデミー賞は毎年、話題になりますけど受賞作の関心は高まることでしょうが、残念ながらそれ以外は殆ど見向きもされないでしょう。ってか映画に興味を持つきっかけになるかもしれないが、これで舞台も観に行って見ようとはなかなかならない。
Mー1は「お笑いそのもの」に興味を持つきっかけになり得て今度、出場コンビ以外が出ているお笑いライブも行ってみたくなるくらいお笑いの魅力が伝わる番組です。
演劇は映画と舞台だとまるで異なる過程で作られるコンテンツなので、これまでも何度か言及しましたが同じ俳優が演じる点では共通しているが、繋がりってそこまで強くないんですよね。
音楽であれば毎年フェスが何回も開かれてまだ知らないバンド・歌手と出会える機会があるが、演劇だと一度のイベントで複数、ましてや何十組の劇団・作品を観劇できる催し物なんてないよな〜とここでも他の分野ではこういう事ができているのに!という事が演劇ではできないのです。
こう考えてみると演劇って他のエンタメ分野と比べて盛り上がり方もイマイチで、広く拡散できないから動員できる観客も少ないことに納得いくかもしれません。
これがここ数年間で私が思った『なぜ演劇・俳優だけこうなんだろう?』でした。
一つの作品を作るまでに人手も多く必要で、時間もかかる腰が重い演劇では身軽に動ける、作れる、繋がりも強い他の分野になかなか勝てない要素が多すぎると思いました。
これは『演劇』とはこういうものなので、じゃあどうやって改善・解決していこうか?という話にはなりません。舞台も映画もドラマもある程度、時間をかけて面白さを伝えていくものなので。
長くて重いのが『演劇』
その特徴から離れれば離れるほど、どんどん演劇本来の面白さから遠いのいていくので根本的な解決策がないのもまた難しいのですよね。
身軽に動ける、一人でも作れる、発信できる時代には演劇は対応できないということでもあると思います。
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