【上手い演技への手順】「ステータス」

今回は「ステータス」をテーマに書いていきたいと思います。これを読む事によって相手と演技をする上で絶対に意識するべき事を学ぶことができて、それはリアルの人間関係においても当てはめる事ができる非常にためになる内容になっているので是非、最後まで読んでほしいと思います。

 

先ずは初めにタイトルの

『ステータス』という言葉の意味。

あまり日常生活では使わない言葉なのですぐにピンとこない人もいると思いますが、主に社会的地位、身分という意味です。

他にもテレビゲームでは「ステータスが高い、低い」などと言いますがこの場合は能力が高い、低いというニュアンスでしょうか。

他にも辞書では「状態」ともあるようですし、このニュアンスだとゲームのキャラクターが毒、麻痺状態などステータスに異常がある、ないという意味でも使われますね。

『演劇』におけるステータスとはやはり社会的地位、身分という意味で用いられます。分かりやすい例は、

職場での上司と部下の関係性。

どちらが「ステータスが高いか?」と言われたら当然、上司の方が高く、部下の方が低いと言えますよね。

しかしそんな部下にも後輩がいるのならば今度はその部下の方がステータスは高いと言えるようになりますね。

このように相手によって自身のステータスは変わります

これを台本分析、シーン、相手ごとの演技方針を決める上で意識しないわけにはいきません。そこでこんなエクササイズをしてみましょう。

ステータス当てゲームをしてみよう。

先ずはトランプを用意します。その中から1〜10の数字が書かれたトランプを一枚ずつ抜き取り、それを教えている人たちにランダムで配ってください。ここでもグループを10人なら5人と半分に分けてください。先ずは最初に行う5人に配ります。

その配ったトランプの数字がいくつなのかは自分以外には見せないようにします。その数字を覚えたら配ったトランプを回収します。

こんなシチュエーションで即興をやる。

場所は新幹線乗り場の待ち合い室です。

ここで先ほど自分が引いたトランプの数字に見合った態度で振舞ってください。

どういう事かというと「1」ならステータスが一番低いという事になります、つまりこの中で一番地位が低い。という事は「10」なら一番地位が高いという事になります。このように数字が低い者は腰を低く高い者は偉そうな態度を取れると言えると思います。

極端に「1」と「10」なら分かりやすいでしょうが問題は中間の数字だと思います。

「4」と「5」の違い、「6」と「7」の違いなど、この辺りはどのように振る舞う、佇まうか、かなり悩むのではないでしょうか。しかしそんな微妙なニュアンスを表現するのも俳優の仕事です。チャレンジしてみましょう。

この即興では新幹線の待ち合い室という事で、基本的に一緒にやる人達と話すことはしなくても良いですが、話したくなったら他者と関わって構いません。その場合は何かしらの動機を明確に持って話しかけてください。例えば友達、知り合いと気が付いて話しかけたなど。

ここでも『自分』をベースにして演じてもらうのですが、ここでは初めてその『ステータス』という縛りができたと言えると思います。

普段は謙虚で腰が低い人だけどステータスが「9」だからかなり高い、これはいつもの『自分』でやってしまったらその数字に相応しくないはずです。

逆もまた然り。人によっては引いた数字にやりにくさも感じることでしょう。

もはや、ここを変えただけで『自分』ではない誰かを演じているかもしれませんね。

これを約10分間ほどやってもらいます。

もう一つのグループには、その様子を観客気分で観てもらい誰がどの数字なのかを当ててもらいます。

これを「ステータス当てゲーム」と言います(何のひねりもない名前ですみません)

これでいわば観客に自分が演じたステータスは伝わっていたのか、伝わっていないのかを判定してもらうという事ですね。

最初に大雑把で、誰が一番高くて、誰が一番低いのか、その順番を決めた後に、じゃあ具体的にどこの数字だったのか言ってもらいましょう。せめて数字は当てられなくても、その誰が一番高いか、低いかの順番くらいは伝わっているようにしたいですよね。

観客に自分のステータスを当ててもらうために心がけるべき事。

演じる側はどうしたら良いのかも少し書いてみましょう。

やはり同じ場に居る共演者をよく観察する事だと思います。特にさっきも言った低いとも、高いとも言えない数字の人はその必要性が高いでしょう。

そのような数字の人の姿勢、態度は、

「ニュートラル」だと言えます(中立という意味)

ステータスが高ければ靴を脱いで足を空いている席に伸ばすなんて態度も許されるかもしれません、低い人は隅の席で目立たないように、または座る事さえ憚れるような人も居るかもしれませんね。しかしその間、中間に居る人はそんな極端な態度に出れない。いわゆる「普通」な態度しか取れません。

そんな似たような態度を取っている人がいたらよく観察して、自分より低い、高いと判断できたら最初の態度を修正、微調整しましょう。見るだけでは無理だと思ったら話しかけてみるのも手かもしれませんね。その場合はちゃんと演劇的に正しい動機付けをお忘れなく。

話しかける時、

「(俺『6』だけど君も近い数字だよね?)」と心の中で念じながら話しかければ、もしかしたら通じるかもしれません 笑

このように周りを観察して、この中で自分のステータスは?と推し量っていきましょう。そうする事によってこの中で自分が一番高い数字で、低い数字で間違いないと分かりやすい数字の人から判断できて、どんどんステータスが明確化されていくはずです。

まとめ

「ステータス」を意識する事によって演じる時の具体的な態度が決まってくるので、台本を読む時もそこに注目して、実際に演じる時も意識してみよう。

そのステータスは相手によって変動するので、この人には大きい態度が取れる、この人にはできないもある。

 

最後に少しだけさらにその先の深い事を話すと、

今回は外面的なステータスを学びました。

しかし内面的なステータスも存在します。

これは本音と建前という表現で、日本人に根付いているものとも言えるかもしれません。

例えば外面的には上司と部下という関係、上司の方がステータスは高かったとしても、その上司より部下の方が有能であった場合、内面的には部下はその上司を見下しているかもしれません。

建前として上司と部下という関係、でも本音は部下の方が精神的な面では上であるということです。

もっと分かりやすいのは悪質クレーマーとそれに対応する店員の関係。

建前上はどんな暴言を吐かれても店員は仕事中というのもあり教えられた通り怒りを抑えて、そのクレーマーの言う事に対して強く反論は基本的にできない場合も多い。

クレーマーも無意識にこの「お客様」という立場の優位性を利用して偉そうな態度に出られるのでしょう。

が、店員の本音はきっと、

「あ〜あ、早く終わってくんないかな〜」

呆れた態度を隠してこんな事を思っているかもしれません。

外に出している態度とは裏腹に、実は内面では大きな隔たりがある良い例です。

一方の悪質クレーマー側も本人に自覚はなくとも当然、社会的には正当な理由無く店員を長い間、縛りつけて業務の妨げになっているような行為を平気でする人間を敬うはずはありません。たとえステータス「10」の態度を振る舞っていてもそれは虚像です。内面はステータス「1」のような貧しい思考しか持ち合わせていないでしょう。

 

このような本音の部分は基本、台本の台詞には書かれてない事が多いです。建前が書かれています。

この本音をサブテキスト、インナーモノローグとか言ったりするのですが、そのような実際には言えない心の叫びならネット上にたくさん溢れているので、今ではそれが可視化できている時代かもしれません。

ネット上は人間の本音を吐き出す場になっている、その本音であるが故に言葉の暴力とも言えるような他人を傷つける言葉が散見されるのでしょうね。

では、今日はここまで、最後までお読み頂きありがとうございました。

 

コメント

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