【声優専門学校・養成所の闇②】本当は必要がないのになぜか乱立している・・・

演劇コラム

昨日のヤフーニュース一覧でこんな記事がありました。

声優事務所とギャラ 厳しい現実

要は大衆の眼に映るのは楽しそうで華やかな世界だけど、現実は相当厳しいよという内容ですね。

このような内容の記事はこのブログ内でも散々、書いてきたことです。

参考記事「ハイリスク・ローリターンそれが声優の世界

そういう世界であるのはこの際、良いとして何が問題かというと、

そんな無法地帯とも言える所へ足を踏み入れる無邪気な若者が後を絶たないということです。

幼い頃から親しんでいるかっこいい、可愛いアニメやゲームのキャラクターに声をあてるという仕事です。

「こんな仕事があるならやってみたい!」

と思うのは自然なことかもしれません。わたくしもそうでした。

そんな風に憧れる人が多数いるのも、それだけ素晴らしい作品を作り上げている証でもあるのでそこも良いのですが・・・、

そんな若者をターゲットに、

声優になりたいなら専門学校や養成所へ入ろう!と勧誘しているのが問題なのです。

これで「あっ、プロの声優を育成する学校があるならまずはここへ入って勉強しよう」と誰もが思ってしまうでしょう。

このある特定の職業に就きたいと思っていて、それが勉強しないとなれそうにもない職業なら、その分野が学べる学校へ行って勉強するというのは一般的な感覚として正しいことです。

看護師になりたいなら、お菓子作りをしたいなら、服の仕立てをしたいなら、それにマッチした学校へ行くのは当然です。

この一般的な感覚を利用しているのでしょうね。

しかし残念ながらこの声優や俳優という仕事は学校で勉強してきた人だけができる仕事ではない、

これも何度もこのブログで訴えてきました。取得しなければいけない資格や合格しなければいけない試験がない以上は誰でもできてしまうのです。

しかも演技というのは人の命を預かっているわけでもなく上手い、技術が確かであるのが前提でないとやらせてもらえないわけでもない、そこまで責任ある仕事であると思われていないのか、

ぶっちゃけ下手な人でも報酬のある仕事をやらせてもらえる場合があります。

これが医療行為であれば訓練をしていない人にやらせるのは有り得ないですし、楽器でさえ音を聴けば上手く演奏できているのかは素人でも一発で分かるので、人前で演奏できるレベルではないという基準があるはずです。

が、声優・俳優、演技の場合はその一定のレベルというのが非常に曖昧なので、演技未経験者でも容姿が抜群に良いとか、事務所のゴリ押しそういう理由だけでもやらせてもらえるのです。

こんな世界なのに真面目に2年間、高い学費を払って勉強する意義がどれだけあるでしょうか?

それでも演技というのも非常に奥が深い分野なのは間違いないので専門的な知識、技術が必要です。

お客さんも無名でも実力が確かな人が使われるなら納得してくれるでしょうし、キャスティングする側だって下手な人にはやらせることはできないという意識の人もいるはずです。

外見だけでなく中身も、上手い演技ができるようになるために勉強、訓練した方が良いという選択も間違ってはいるわけではない・・・と言えるのなら良いのですが、さらに根深い問題があります。それが、

そもそも現時点でも声優・俳優の数が多すぎて、需要と供給のバランスがあまりにも悪すぎる、つまり人手不足ではないのでしばらく新人は必要がない。

この事実から何が言えるのか?

それは極端に言えば新人を育成するための専門学校、養成所といった養成機関は現時点で必要なし、少なくとも毎年何百人と募集する必要はないし、専門学校の数もこんなにいらない。

これも一般的な感覚なら、今の日本は人口減少もあいまってどこの業界も人手不足と言われています。特に深刻なところだとまだろくに勉強もしていないのに現場へ行ってくださいと言われることもあります。

声優・俳優だって定期的に新人が入ってこないといけないはずだ、と思ってしまいがちですが、この世界に限って言えば人手不足ではありません、しばらく間に合っています状態というわけですね・・・。

どのくらい需要と供給のバランスが悪いのか?

大塚明夫さん曰く、

需要が300に対して供給できる人数が1万だそうです。
(著書「声優魂」より)

300人くらいにしか声の仕事だけで生活できる仕事量はないのに、その枠を求めている人が1万人いるということです。

このアンバランスさで圧倒的に仕事を与える側の方が強気に出られるので、報酬も安くされがちなのです。

これは道理としては合っています。

仕事の数はごく僅かだけど、やりたい人がめちゃくちゃ多いのなら安い報酬でもやりたいと手を上げる人はいるはずだと見込めますし。

これが現実にも関わらず、

声優や俳優のプロを育てるという学校、養成所が数多くあり毎年入学、入所者を募集している、これが一番の問題だと思います。

ではなぜ人手は足りているのに学校や養成所が東京を中心に多数あり毎年、生徒を募集する必要があるのかは単純です。

儲かるからです。

「(声優事務所としての)本業がイマイチでもうまくいくパターンもありますけどね、とくに声優学校、養成所ですね。あれが本業以上のドル箱になれば経営自体は安泰でしょう。所属の人気声優も学校宣伝のために使います。仕事のないベテランを講師にもできますし

いまや養成所ビジネスが声優事務所を支えているといってもいい。声だけで食えているのは300人もいないとされる声優業界だが、毎年3万人以上が声優を目指すと言われている。そんな声優になりたいという若者はもちろん最近は40代の中高年からシニア層まで受け入れている学校がある。演技未経験で40代から職業声優になるのはシステム上もほぼ不可能だが、現実には「声優になれる」と全国各地で募集している。

「志望者は驚くほどいますが、ごく少数のエリートとその他の志望者は最初から内々に分けます。スターシステムに組み込まれる前者と本所属どころか声優そのものになれない後者ですね。残酷ですが、役者の世界はそういうものです」

世の中は才能だけじゃやっていけないが、その才能があること、は大前提となる。演技や歌唱はもちろん容姿も才能、役者は不平等が当たり前の世界である。そしてほとんどは安いとされる1万5000円にすらたどり着けない。ランカーになれるか以前に、そもそも声優業につけない生徒が圧倒的多数である。

「でも少数の天才だけじゃ養成所ビジネスが無理なのも事実です。一般生徒というその他大勢も必要です。その辺を割り切れないと学校運営で経営を圧迫することもあります。少数精鋭の養成所は理想かもしれませんが、経営者の自己満足になりかねない」  有望な生徒は無料か格安の特待生でその他大勢は大金を払う。プロスポーツを目指す若者と同様の残酷物語、しかし優勝劣敗の才能商売とはそういうことなのだろう。

リンク先のヤフー記事からの引用です。

人手は足りているけど、毎年なりたいという人が何万人といるならこれをビジネスにしない手はないということです。

あたかも多くの人にチャンスはある!という宣伝をして、志望者を集めて高額のお金を取る、その収入を事務所の維持費に使っているということですね。

理想は可能性のある人を少数集めて、育てるというのがあるべき姿なのでしょうが、現実はそう甘くはないと記事本文でも書かれています。

こういう場所で教える講師の方も本業では仕事がないから、学校や養成所へ出向き教えることによって少しでも収入が得られるというのも寂しい現実です。

教える側に回っている人でさえこの世界でやっていけていないのに、生徒にチャンスはあるのでしょうか?

このように高校を卒業したばかりの若者が他の真っ当な職業と同じような扱いで、目指してはいけない業界であるのは間違いがありません。

根本的に人手が溢れ返っていて、多くの人が仕事にありつけない業界なのに、学校や養成所は毎年どんどん新しい人を入れさせようとしています。

この不都合な部分を覆い隠して夢見る若者から搾取していると言ってよい現実には激しく憤りを覚えますので、これを改善させるためにも声優という立場の待遇を見直す、そこから始めないといけないのかもしれません。

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