演劇、音楽、ダンサー、ミュージカルなどのエンタメ世界に趣味としてではなく、仕事にしようと決意して飛び込んだ、或いは飛び込もうとしている皆さんはそんな世界で『成功』するとはどれだけ難しい、厳しいものなのかちゃんと理解している、していたでしょうか?
今回は意外と誰も教えてくれないし、誰もが最初は勘違いしていそうなテーマとなります。
演劇の世界に飛び込んだ私は、
『実力が認められたら成功するはず』
そう見込んで挑戦をしました。
ちなみにここでいう『成功の定義』とは、
それらに関連する仕事だけで生活できるだけの稼ぎを得るです。
おそらく私の周りの人もそうだと信じてレッスン、稽古に励んでいたと思われます。
しかし、そうではないからこんな記事を書いているわけでありまして・・・💦
もしも、
「あなたはこちらが要求したパフォーマンスをしっかりできるみたいですね」と評価されて、
「おめでとうござます!ではあなたのためにこれからお仕事を用意します!」
となるであればおそらく私はある程度はその要求に応えたと思っておりますし、私の他にも上手いなと思う人は数人いました。
「きっとその数人はデビューくらいはできるんじゃないか?」と当時の私は思ってしまったわけですが、そんな甘くはないというお話になります。
どれだけ厳しいのか?
その例えをこれまでの記事でも何度か書いてきました。
・正社員もアルバイトも募集していない会社に私を雇ってくださいと頼み込むようなもの
・なんとかその会社の一員になれたとしても、その会社には社員が一万人在籍していてそれだけの大企業かと思いきや、実際は300人程度いれば事業は回る規模・・・
などなどライバルが多すぎる上に、仕事の数も少ない、
こちらが想像している以上に『必要とされている人数が少なすぎた』
こんな状況だと知って、
一つの専門学校から3、4人くらいはデビューできる人は出てくるんじゃないか?とそんな私の予想がかなり甘いものだと思い知らされました。
いち学校単位どころか毎年、高校卒業してから、そのくらいの年齢から俳優や声優を目指す人全ての人の中から3、4人くらいがいいところです。
だからと言って、
上記の例えが企業に雇ってもらうになっていますが、厳密にはそうではないから、はなからやめた方が良いとは断言することはできないのです。
いち企業であるなら人手が十分に足りているのであれば退職者が出て空きができるまでは募集しなければいいだけなのですが、
この俳優・声優を始めとしたエンタメの世界ではたとえ本人は辞めるつもりはなくても実質クビをとみなされてその人よりも魅力がある、可能性があると認められた他者に乗り換えられたなんて事が多分に起きてしまうからです。
ご自身が目指している分野で、私は絶対にやっていける自信があります!このくらい言える人であればじゃあ挑戦してみても良いのではないかと思いたくもなるわけですが・・・、
じゃあ、その埋まっている枠を自分に空けてもらう、もっと言えば奪うとはどれだけ難しいのか?って話になります。
これに関しては分かる人には瞬時に分かる例えを最近、見つけてしまいましたので2024年版としてこうして改めて書くことにしました。
X(旧ツイッター)でコスメ×カードゲームという組み合わせで今、話題になっているのはご存心でしょうか?
コスメの分野をカードゲームに置き換えると・・・といった感じでわかりやすい例えが飛び交い思わぬ形で双方に理解が進みました。
こんな風にもしもこの俳優・声優といった演劇・エンタメ分野をカードゲームに置き換えることによってその厳しさを表すことができてしまうのです。
そのカードゲームの元祖として『マジック:ザ・ギャザリング(通称MTG)』というものがあります。
そのMTGを用いてこの世界を例えると・・・、
思いっきり専門用語になりますが、
『ヴィンテージ環境』というフォーマットになります。
これ、マジック:ザ・ギャザリングがどんなカードゲームか理解している人だったら一発でどれだけ厳しいのかイメージできると思います笑
簡単に説明するとマジック:ザ・ギャザリングのようなカードゲームの元祖、歴史の長いカードゲーム(30年の歴史があります)は今となってはカード枚数が増えすぎて、このまま何もせずに新しいカードを作っても過去に出た選ばれし最強カードと比較されてしまうことからそれらを上回る、同等であるくらいの強いカードでないと使われなくなるので、そのカードパワーのインフレを防ぐため何種類かのフォーマットを作ったわけです
要は現在から、
3年以内に出たカードしか使えないフォーマットだったり、
10年、20年以内に出たカードが使えるフォーマットを作ってプレイヤーのカード資産に応じたデッキを作れるようにしたわけであります。
その中でも
『ヴィンテージ環境』とは歴代のほぼ全てのカードが使えるフォーマットに該当します。
これで何が言いたいのかはマジックのことを知らない方でもお分かりになれたのではないでしょうか・・・?
つまり、競争していかなければいけないのはこんにちまでその世界で起用され続けてきたベテランから若手までを含む強者たちということになります。
カードゲームの世界で起きている・・・、
「あっこの新しいカード、このデッキのこのカードと入れ代えれば強化されるんじゃね?」
これが意味するのは、
その古いカードは新しいカードが出てきたことにより戦力外通告を受けたことになります・・・。
これと同じことがこの世界でも起こり得るということです。
ただエンタメ分野は明確に勝ち負けを決める勝負の世界ではないので他よりも強ければいい、そう単純なものでもないのがまた難しいところです。
そもそもこの世界の実力って数値では表せない非常に曖昧なものですし。
決して歌が上手い部類ではないけど歌手としてステージに立てている人はいますし、演技がずば抜けて上手くなくても映画、ドラマ、舞台に出ている人はいます。
そういう意味ではこの世界で選ばれるのはもっと複雑な要因となります。
それは、
時代が良かった、動き出したタイミングが良かった、たまたま目にしたオーディション情報が目に止まり受けてみた・・・とかなり『運要素』もあると思っています。
ともかくやる気と若さゆえの勢いだけで目指しても、こっちの武器は棍棒なのに戦わなければならない相手の武器が戦車なら勝ち目なんてあるわけないですよねってことになります・・・💦
正直、言うと私も知り合いの俳優から舞台に誘われた時に、高校時代から好きなバンドのライブと日程が重なっていたのでそっちを優先したことがあります。
演劇と音楽、分野は違いますし、その公演をやるにあたりかかっているお金も桁が違うのですがお客さん目線から言わせてもらえればチケット代と交通費を払って指定された会場に行くという意味ではどっちも同じです。
片やライブをすれば一公演で数万人を動員できる世間から認められたバンドと、一方は一公演100人前後しか入らない会場での無名の俳優が出演する演劇公演を比べられてどっちに行こうか検討されてしまうことさえあるのです。
競合相手と思っていないし、そんな人気バンドと比べないでよと思ってしまいますが、一人の人間が自由に使える時間には限りがあるように、そんな配慮はしてくれないのです。
また『ヴィンテージ環境』とはそういうことです 笑
このことから、
真正面からぶつかって行っても勝てるわけがない、なら綿密な戦略を事前に立てて挑む必要がある、そんな分野になっているのです。
その戦略が俳優・声優として売れたいなら専門学校や養成所に数年間通って実力を磨く、ではないのはもはや間違いがありません。純粋な実力だけでは越えられない壁が出来てしまっているのですから・・・。
この従来のやり方が有効なのは、まだその世界の人手が足りていない場合のみです。だから人材育成機関を作って人を呼び育てていこうとなるわけです。
確かに声優というカテゴリであれば昔はさほど注目されていた仕事ではなかったが徐々に俳優ではなく最初から声優をやりたいという人が増え始めた、アニメやテレビゲームが今より盛んに作れる時代が来るのでより人手が必要になってくるタイミングもあったので、この専門学校や養成所でしっかり勉強してデビューしたという人は現在40、50代くらいの年齢の声優さん達を中心にそれなりにいたので、その経歴を見た子供達がそれを真似をしようと思うのも仕方がないことですが、そのやり方も時代が進むにつれて通用しなくなってきたのだと思います。
まだスポーツのように年齢により第一線からは身を退く人の循環が比較的、早い世界ならそれでもチャンスはあったでしょうが、私が挑んだ演劇、声優の世界は小学生の頃から憧れている、声優を目指すきっかけとなった大好きな声優さんは未だに現役で第一線で活動されております。
自分が幼い頃から活動していて、既にある程度の地位を手に入れた人とどう競い合っていけばいいんだって感じですよね。
そんな状況から新たな道を上手く見つけて有名になれたのが、
YouTuberではないでしょうか?
そこを始点にしてテレビ出演や他のエンタメコンテンツの出演を果たして、活動の幅を広げた人は一定数おられます。私もこの当時の光景を見てあぁ、もう時代は変わって新しい切り口で成功した人が出てきているんだなと感じたものです。
このように今の時代をしっかりと見つめ、分析して今ならどんなやり方が適切なのか?を見極める必要があるのです。
少なくとも、私の関わった演劇分野はそこらへんの目指し方のアップデートがされていないんじゃないかというちょっとした危機感もあってこのような発信をしている次第です。
建前上はプロを育成すると謳っている学校や養成所ではこんな現状は教えませんし、厳しく今の実力ではプロとして通用しないとはっきり教えることもしていません。あくまで個人のレベルに合わせて、昨日より今日の方が成長しているならそれで良しとしています。
厳しければ良いという訳でもありませんが、このとてつもなくハードルの高い前提条件は変わりようがないので、せめてそこを正しく認識させなければではそれを踏まえてどうするべきか?そんなスタートはないのではないでしょうか。
容姿も芸能人を彷彿とさせるし、技術的にも確かなものがある、それなのにオーディションに受からないのでどうして?どうして?と納得できない人も見てきましたが、そうなってしまうのもこの前提条件を知らないからでしょう。
だが、そのプロとして通用するレベルとは?というのも重ねて基準というものは曖昧なので巡り合わせが良ければどこかで起用してもらえる可能性はあるから、ほんと難しいんです😓
私も参加してたあるワークショップで指導者から演技を酷評された人が「オーディションに受かりました!」と報告に来た時にはその指導者は信じられず固まってしまった、そんな例もあるので 笑(どうやらイメージする役のキャラクターとその人の持っているキャラクターがあまりにも一致していたので即採用となったそうです)
このように何が起こるのか、どこにチャンスが転がっているのか分からないのがこの演劇などのエンタメ業界なので、
一律のやり方で目指さない、なんならどんなやり方でもきっかけがあれば参入することができる余地がある、そんな自由でカオスな世界だと認識して、
自分に特化した目指し方を見つけていってほしいと思います。
では今回は以上になります。ここまでお読みいただきありがとうございます。
・おまけ
ちなみに、このエンタメ業界は歴代の猛者と競い合わなければならない環境だと言いましたが、そのコンテンツが使える予算によってはどうしても人気者を、実力者を使うことができないという理由から選択できるカードが狭まることはあります。
私は、
予算が一千万円前後の舞台、
脇を固める出演者に2万円のギャラが支払われたCMに出演したことがるので、
3年以内に活動を開始した新人の中からであれば選んでくれる人がいる、
そのくらいのレベルだったのかな〜と自己評価しております。
当然どれだけ制約ある中でも選ばれることのない人もいる残酷な世界でもあります。それはカードゲームでもどれだけ使えるカードの範囲が限定されていても、デッキに採用されることはほぼないカードが存在するのと同じことです。
もっと残酷なのは演者(カード)単体としてはかなり優秀でも、現在の環境からその演者を生かせるコンテンツ(デッキ・カード)はなかったことから活躍できなかったパターンというのもあります。
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