先月から『フリーランス新法(フリーランス保護新法)』という言葉をニュースなどで聞くようになったのではないでしょうか?
それもそのはずです。今年の11月からそのような法律が施行されたからです。
様々な働き方ができるようになった昨今いわゆる『フリーランス』として働く人が増えていますよね。
しかし、名前の通りその人は企業には属していない『個人』になります。
そんな立場の人がもしも大きな組織である『企業』と取引をすることになった場合、明らかに力関係としては企業側の方が強くなりがちです。
それにつけ込んで報酬を著しく低く提示したり未払いがあったり、度を越した作業のやり直しを求めてその分の追加料金はなし・・・など不当に扱われる事もこれまで多々ありました。
そんな事例を防ごう、法律で禁止にしましょうと考えられたのがこの『フリーランス新法』になります。
もちろんこれは演劇業界を始めとしたエンタメ業界にもはてはまります。
というかこの業界ほど『これからは法律で定められるようになりましたので従ってください』とようやく法的根拠が出来た重要なものであるはずなので、この世界で活動をしている人達は無関心ではいられないと思われます。
フリーランス新法の概要
1 書面などによる取引条件の明示
2 報酬支払い期日の設定・期日内の支払い
3 7つの禁止行為
4 募集情報の的確表示
5 育児介護等との業務の両立に対する配慮
6 ハラスメント対策に関する体制整備
7 中途解除などの事前告知・理由開示
・・・と主にこの7つの項目を『フリーランスに依頼する企業側』は守らないといけないわけですが、ここで特に演劇界で重要な項目に絞って解説していきましょう。
・1 書面などによる取引条件の明示
一番に出てくるだけあってこれが最も重要な項目かもしれません。
演劇界では何か製作過程などでトラブルが起きた時に「口頭だけで契約書はありません、書面上で交わしていません」という事が発覚することはよくあります。比較的、大きな事業であるアニメ制作でもそんな話を耳にしますよね・・・。
そういうのは全てNGになると思っていただければと。
フリーランスに対して業務委託をした場合、直ちに書面または電磁的方法(メール、SNSのメッセージ等)で取引条件を明示する義務があります。
明示方法は、口頭での明示はNGで、書面または電磁的方法かを発注事業者が選ぶことができます。
取引条件として明示する事項は9つです。
①給付の内容 ②報酬の額 ③支払期日 ④業務委託事業者・フリーランスの名称⑤業務委託をした日 ⑥給付を受領する日/役務の提供を受ける日 ⑦給付を受領する場所/役務の提供を受ける場所⑧(検査をする場合)検査完了日 ⑨(現金以外の方法で報酬を支払う場合)報酬の支払方法に関して必要な事項
この項目だけは『フリーランス同士』の取引でも課せられる義務になりますので、繰り返しここだけでも全ての人が押さえておくべき点になります。
(主にこの法律は企業がフリーランスに依頼する場合、守るべき点に主眼を置いているがそれが『フリーランス同士』に変わってもこの点だけは守るべき項目になります)
確かコロナ禍でもこの契約書や領収書といった取引実績の書面がなかったがために、収入が減少したことを証明できずに補償金が受け取られなかったなどの事例があったはずです・・・。
そもそも当人達はちゃんとこれは仕事・ビジネスという意識を持ってやっているのか、取り組む意識はプロと同等だけど利益は求めていない趣味の延長のようなものでやっているのかそこらへんが曖昧なまま活動していることも珍しくないのが演劇界なので、そんな事前に契約書を交わす、領収書の発行とかの習慣はなかってでしょうね。
あと気になるのは事務所と「マネジメント契約」をしている俳優・声優間でも、それが必要なの?と思うかもしれませんが答えは多くの場合は「必要である」となるはずです(最近出てきた「エージェント契約」であるなら必要なし)
いや、事務所はタレント側の要望により業務を引き受けているからこちら側からは依頼はしてないと主張する事務所もあるかもしれませんが、建前上はそうであったとしても関係性がフリーランスに企業が仕事を依頼しているというのと何ら変わらない実態であると言えるのであればこの義務を負う必要があります。
これは事務所と所属タレントの関係性がもはや「雇い主と労働者である」という裁判での判決も出ているので「実際はどうなの?」というのが重要になるのだと思います。
・2 報酬支払い期日の設定・期日内の支払い
報酬の支払期日は発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内のできる限り短い期間内で定め、一度決めた期日までに支払う必要があります。
ただし、元委託者から受けた業務を発注事業者がフリーランスに再委託をした場合、条件を満たせば、元委託業務の支払期日から起算して30日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定めることができる【再委託の例外】もあります。
報酬未払いを防ぐためにもいつ報酬を支払うのか具体的な日にちを決めることはやはり重要でしょう。私の場合は概ね仕事が完了してから一ヶ月以内には支払われましたが、最近のニュースでの事例紹介を見ると見積り書を送ってから8ヶ月後にようやく支払われた例なんかもあるそうで・・・そんな先延ばしされたら生活する上でも支障出ますよね💦 この報酬はいつまでに必ず入ると分かるようにするべきだと思います。
ここでも「◯月◯日までに支払います」は駄目です。「◯月◯日に支払います」と明言しなければいけません。
ちなみに引用文最後の「再委託の例外」とはなんぞやと言うとそのフリーランスに依頼した企業は既に別の企業から依頼を受けており、その一部をさらにフリーランスに依頼して仕事をしてもらおうとなったパターンがそれに該当します。こうなるとフリーランス側は依頼企業がその上の企業から報酬を受け取った後に、報酬を支払うように設定する事ができるそうです。
・7つの禁止行為
フリーランスに対して1か月以上の業務を委託した場合には、
7つの行為が禁止されています。
①受領拒否(注文した物品または情報成果物の受領を拒むこと)
②報酬の減額(あらかじめ定めた報酬を減額すること)
③返品(受け取った物品を返品すること)
④買いたたき(類似品等の価格または市価に比べて、著しく低い報酬を不当に定めること)
⑤購入・利用強制(指定する物・役務を強制的に購入・利用させること)
⑥不当な経済上の利益の提供要請(金銭、労務の提供等をさせること)
⑦不当な給付内容の変更・やり直し(費用を負担せずに注文内容を変更し、または受領後にやり直しをさせること)
これこそフリーランスが直面する悩みを詰め込んだような内容ですが、おそらく真面目に働いている当人が理不尽だ・おかしいと思った大体の行為は違反とされているはずです。
その中でも俳優・声優など演劇界が注目するべき点はと言うと・・・、
五番目の『購入・利用強制』
これがこれまで舞台を中心に行われていた「チケットノルマ制・ノルマが達成されなかったらその分は自腹」がそれに当たる可能性が高いとされています。
これに関しては多くの出演者が声に出せなくても内心「なんかおかしくない?」と思っていたことですが、その感覚はこの度の法律でも同じく「おかしい、違法」と判断されたことになります。
ここで注意が必要なのはこの7つの項目、たとえフリーランスである本人が構わないと了承した上でも守らなかった場合は違反になる点です。
同意したからOK、違反ではないとはならないので気をつけてください。後から考えが変わっても「あの時は良いって言ったじゃん」は法律的には通用しないのです。
と、ここまで色々と解説をしてきましたが法律に関する文章と向き合ったために、いつもより頭を使いましたし読んでいる側もいまいちついていけていない人も多いと思われますのでこの辺までにしておきたいと思います・・・😓
とりあえずフリーランスを、エンタメ業界で個人で活動をする俳優・声優、ミュージシャンなどの立場の人を守る法律が出来たということで、これらに該当する人達は絶対に知っておくべきこととして頭に入れておいておきましょう!
このように学校や養成所ではもの凄く大事なことなのに全く触れられない、教えてくれない演劇・エンタメ界のビジネスに関する知識・情報を発信しているのが当ブログになりますので他の記事も是非目を通してみてください。
コメント