【空気の流れを読む】台本の読み方、分析「シーンの変わり目を探す」

今回は「変わり目」を探すという事で、そのシーンの流れ、空気がどこで変わるのか?を探る作業をしていきます。

これができるようになれば退屈なシーンと言われる事が無くなっていく、役が今どんな気持ちなのか観ている側にも伝わっていくはずなので最後まで読んで是非できるようになっていってほしいと思います。

シーンの流れ、変化を把握する必要性。

 

台本の他にも小説、脚本と言われるものにはシーン毎に区切られていますよね。
第一章、二章。さらにその中の1、2・・・等といった表記で。
なぜこのように区切るかと言ったら物語の場面が大きく切り替わったり、展開がひと段落したからですね。
実はさらに細かく区切る事も可能です。
第一章その1のシーンを千切りのようにもっと細く分けるというようなイメージです。

なぜそのような事が必要かというと、冒頭で申した通りそういった変化を意識しないとそのシーンが最初から最後まで単調な、起伏のないシーンになりかねないからです。

それを防ぐために演じる側はそのポイントを探してこの瞬間から何かしらの変化がないとおかしいと注意深く読む必要があります。

変化とは内面、心理的な変化なのか、大きな動きが生まれる外面、身体的な変化なのかはそのシーン次第。

ちなみにステータスの記事でも話したこの内面的、外面的という言葉、僕の演劇論では頻繁に使うキーワードなので頭の片隅にでも置いてもらえればと思います。今は詳しく触れません。

ちなみに一番分かりやすい例、ここが変わり目だという瞬間は新しい人物が登場してきた時です。

この瞬間こそ変わり目だと台本に線でも引いて、ここから先は自分の役の演技に大きな影響をもたらすと認識しなければなりませんね。

それでは他にはどんな時か?今回もサブテキストの回から引用しているある二人の会話を使ってみてみましょう。

シーンの流れが変化する、その変わり目をチェック。

 

「よっ」
そう挨拶をして神崎浩介《かんざき こうすけ》が隣に座った。
「おめでとう。上げた曲、なかなかの再生数じゃん。俺も一応メンバーの一人として嬉しいよ」
「こんなに早くあれだけ再生されるとは思わなかったけど、あのクオリティだったら当然だろう」
「確かに。それは認める。そのドラムを俺が叩いた、俺は言われた通りに叩いただけだからそこまでじぶんごとのように思えないけど、やっぱりちょっとは自慢したくなるくらいは嬉しいよ」
「どう思っている?」

☆1
「えっ、何が」
「その、自分のバンドオリジナル曲が一定の評価をもらって」

☆2
「う〜ん、さっきも言ったけど、俺はいわゆるサポートメンバーみたいな位置付けだし、すごいとは思うけど、それをあまり俺がでしゃばるのは違うかな。逆に拓実はどうなの?」

☆3
「俺? 俺は……この勢いを絶やしちゃいけないと思う」
「……それって、どういう、」

☆4
「勿体ないなってことかな。他人が作った曲をコピーして演奏上手いって言われるのとはわけが違うでしょ。だから勿体ないって思う」
「なるほどね、それは分かる。でも現実問題、1曲だけ評価されてもそのクオリティの曲をあと何十曲って作っていかなきゃいけないと思うと気が滅入らない?」
「そんな弱音吐いてどうするんだよ」

☆5
「……俺は、申し訳ないけどもうそんな長く協力する事はできないよ。たとえ拓実がその気でも」
「それって、どういう、」

☆6
「だから、俺は学生時代の思い出として拓実のバンド活動に付き合ってきたけど、それも卒業するまでの話って事。厳密に言えば来年から卒業後の進路を本格的に考えないといけないし、もうそんな長くないでしょ」
どこかの木にとまっているカラスが二羽、カーカーと絶え間なく交互に鳴いている。

☆7
「浩介は勿体ないって思わないってこと?」
「まぁ、そうね。だって厳しい世界でしょ」
「それでも上手くいっているんじゃないかって思うけど」
「ここまではね。磯村君も女の子に人気あるし、それでいて初のオリジナル曲が一週間で数万再生されたってなったらそういう気持ちも湧いてはくるけど、やっぱりそれでも厳しいって」

☆8
「浩介は卒業後はどうするの?」
「俺? 俺は……俳優になりたい」

☆9
「はっ!? 俳優? そんなの初耳だけど」
「だって今、初めて話したもん」
「……俳優ってお前、芝居なんてできるの」
「今はワークショップに参加して勉強しているんだ。実は事務所にも一時入っていたんだけど、そこの事務所がとんでもない事務所で今年の春に無くなった。理由は社長が夜逃げしたから」
「だったらなんで音楽なんてやってたの?」
「それは単純に芸の幅を広げるためだよ。オーディションでも楽器ができるっていうのは良いアピールポイントになるし」
「さっき音楽の世界は厳しいって言ったけど、俳優の道も音楽と同じくらい厳しい道なんじゃないの」
「もちろん、それは分かっている。音楽と俳優、俺はどっちを選ぶかって聞かれたら俺は俳優の道を選ぶ。ただそれだけ」
「そんな痛い目をみてもか」
「あの件は俺も浅はかだったと思う。とにかくどこでも良いから事務所に所属したいって思っていたし。今度はもっとよく考えて選ぶつもり」
「そうか」

☆10
「だったらなんでここの大学に入ったの?」
「俺も同じ質問を拓実にぶつけるよ」
ちょっとの間。

☆11
「俺にこんな話をしているって事は、まさか毅にもしているの?」
「あぁ、毅こそ多分、無理でしょう。そもそもなんであいつの趣味がベースなのかも最初は疑問に思っていたし」
「見た目で判断するなって。でも機材に関してはめちゃくちゃ詳しいし、拓実もそれで助かった部分はあるでしょう」
「それは認める。それに関しては毅の勉強している分野に通じるものはあるからだろうな。でも、まぁ、聞かなくても毅の滲み出るオーラから音楽の道に誘うのは正直憚れる」
「本当に趣味として心から楽しんでいるって感じだしね。あの無垢な心で荒波に耐えられるかって言われたら、おそらく無理だろうね」
「野心なんてないだろうしな」
「肝心の磯村君はどうなの? とりあえず彼さえ説得できたらなんとか卒業後もやっていけそうな気はするけど」

☆12
「磯村には年末、実家に帰った時に会って話してみる」

☆を付けた所がその変わり目。

 

・・・流れ、空気がここから変わっていると思われる瞬間に「☆」を付けてみました。

決して長くはないこの会話の中でも12回、何かしらの変化があるであろうと僕は読みました。

「なぜか?」

今まで自分の中で理解できればいいと思っていた事なので、上手く納得できる説明はちょっと難しいかもしれませんが、どんな変化が起きていると考えられるかを少しだけ書いてみたいと思います。

 

☆1

変化前、最後の台詞で拓実が「どう思っている?」と神崎からしてみれば何を聞きたいのかいまいち分からない質問をしてきます。つまり神崎には「戸惑い」といったような感情が生まれると思います。これはその前まではなかった感情ですので、ここで一つ流れが変わったと言えると判断しました。

☆2

わずか二つの台詞の後に早くも変わるとしましたが、その質問の求めている返事をある程度、理解したので「そういうことね」といったように納得してどう返すかを考えます。これも心境に大きな変化が起きたと言って良いのではないでしょうか。

☆3

今度は神崎が同じ質問を拓実に投げ返す。そのボールが拓実に渡ったという事でここでも変化したとなります。

こんな感じでけっこう目まぐるしく、短いスパンで役の心境は変化していくというのを心得て各シーンを分析してみてください。

残りはどんな理由が考えられるか?

これを一人でもできるようにならないと意味がないのでお時間がある時に考えてみてください。

ではそんな心境の変化が生まれると意識しなくても自然と外面的にある部分が変化するという事を次回、書いていきたいと思います。

まとめ

ではここでまとめます。

・台本というのは第一幕、二幕、一場、二場とシーンが切り替わる、変化する度に区切られているが、さらにそこから区切る事が可能。

・その細かい変化も意識しないとそのシーンが単調、退屈になりかねないことからその変わり目を探すのは重要な作業になっていきます。

・変わり目を探すポイントとしては主に役の心理が変化した時、外的要因(新しい人物の登場や何か音が聞こえてきたなど)が挙げられる。

では今回は以上になります。最後までお読み頂きありがとうございました。

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