今回は「台詞の変化」ということで役のセリフに着目してみましょう。
演技を何かしらの形で経験した事がある方なら一番気を遣うのが役のセリフ、言い方ではないでしょうか?
そしてそれで頭を抱えるくらい思い悩むのもここだと思います。
そんな悩みに応えてくれるのがこの記事になります。この記事を読む事によってそのセリフを言う時に何を考えれば良いのか、一つのやり方をご紹介いたしますので是非、最後まで読んでみてくださいませ。
また下記の三つの記事も読んでくれますとより理解が深まるので合わせてお読みください。では中身に入っていきます。
シーンの流れが変わるなら、役のセリフも変化しなければならない。
前回は各シーン毎、さらに細かく切り分けて変化、変わり目の箇所にマークをしたという事をしました。
今回も似たような事をするのですが今度は台詞の変わり目です。
このような事をするのは何かしらの変化がないとそのシーンが単調になり、観客側は飽きてくると言いまいしたがそれと同じ事が言えるのが台詞の変化です。
特に1ページ全てを埋め尽くすような長台詞、これを見事に言い切るにはそれなりの工夫が必要なのは言うまでもないですよね。
とはいえ役者側からすればこんな長い台詞、言うのが大変だと思う事もあるでしょうが役からしてみれば、
これだけ長い台詞を言うだけの動機や湧き出てくるものがあるから言っているわけで、しっかりと役のことを理解して、それだけのものが積み重なっていれば後はそれに身を委ねていればオッケー・・・、
と言ってできるのなら苦労しません 笑
だから上手くいっていればこういう変化が自然と起こるはずだというのを先ずは客観的に分析してみましょうってことです。
台詞の変化の代表的なものといえば、
・音の高低が変わる、
・話すスピードが変わる(速くなる、遅くなる)
・次の言葉までに「間」をおく、
・声量(大きい、小さい)
演出家から「この台詞、もっと低い声で言えない?」などの要求をされる事はよくある事ではないでしょうか。
そういった外面的な変化の要求に自在に、瞬時に応えられるようにはやはりボイストレーニングを積んで音域の幅を広くしておかないと優秀な俳優とはみなされないでしょう。
このような聞けば分かる変化を駆使して台詞を彩っていきましょうという事です。
その変化をさせるべきセリフの変わり目を探して、ここでも何かしらの印を付けていきましょう。今回も前回から使っている二人の会話の中から比較的、長い台詞をピックアップしていきます。
セリフの変わり目にチェックを入れる。
「今はワークショップに参加して勉強しているんだ。/ 実は事務所にも一時入っていたんだけど、/ そこの事務所がとんでもない事務所で / 今年の春に無くなった。/理由は社長が夜逃げしたから」
変化させても違和感ない所に「/」を入れてます。
このセンテンス毎に何かしらの変化をさせて役の心境がより観客にも伝わるようにしていきます。
出だしの部分はその前の相手役の台詞を受けて決めるのが良いと思います。
「……俳優ってお前、芝居なんてできるの」
この問いに対して神崎は今まで打ち明けてこなかった事を言うので多少なりとも、気まずさはあるかもしれません。
そんな気持ちを表すために、
・この台詞を受けて直ぐに言葉は発さずに「間」を入れてみてはどうでしょうか。そしてゆっくりと話し始める。
・「実は〜」からはちょっと高い声から入ってみる。スピードはさっきよりは速めに。
・「そこの事務所が〜」からは今度はスピードを遅くして、声を低くする。「とんでもない事務所」をよりじっくりと言ってみるか。
・「今年の春に無くなった」息が抜けるように言う(ウィスパー気味)抜けきったら地面にポテっと落ちるイメージ。
・「理由は社長が〜」笑いを含ませて言う「馬鹿みたいな話だろう、ハハっ」みたいな。話のオチだから今までで一番ゆっくりと言ってもいい。特に「理由は」の部分に残念な気持ちを乗せる。
最初はゆっくり言って、そこから速くさせたり、高い声で言ったり、最後は感情やイメージまで書いていますね。
そう、いくら高い声で、遅く、速く、低くと言ってもそこにプラスしてどんなイメージかを付け加えるとより言いやすくなるかもしれませんね。
そして忘れてはならない感情、喜怒哀楽。
この言葉にはどんな感情が宿っているのか。
その感情さえもセンテンス毎に変える事はできなくありません。
根底にある感情は変わらなくても今回なら悲しい話ではあるけれど自虐的に笑って、相手をあまり深刻な気持ちにさせないという気遣いをしたりと・・・。
これも一例でありこれが正解というものは基本ないと思っておいてください。
演出家、監督から絶対に変えるなと言われない限りは、これとは真逆の事をやってみたっていいわけですし、必ずしも全て変える必要もないとも言えます。
色んなパターンを試してみて、自分にしっくりくるものを探してみてください。
NGなのは固定させない、この言い方以外は有り得ないと決めつけない事です。
これは同じシーン、同じ台詞を何度も言っていくうちにマンネリ化していくのを防ぐという意味でも効果的です。
やはり常に同じシーンでも刺激的にやるには「変化」が必要ですよね。
ここで前回書いた事を思い出してもらい、
シーンの流れの変化は当然、台詞にも大きな影響も与えていきます。
そのシーンの変わり目、最初の台詞では今までより振れ幅の大きいものになる事も珍しくないでしょうね。(周りの迷惑となるような大きな声を出したり、沈黙と言えるくらいの間をとるなど)
このように流れが変わったという事は外面的にも少なからずその変化が表れるのが自然で、その一つに台詞を言う時の変化が挙げられるのが前回は書かなかった事です。
さらにその台詞の変化は絶え間なく続き、今回のように細かく区切ってこれだけの回数変える事ができます。他にも立ち上がったり、姿勢が変わるといった身体が変わるという事も起きますがここでは詳しく書きません。
最後に次のステップに関することを書きますが実は今回、書いた事は外面的なアプローチだったりします。
冒頭を読めば分かりますが俳優の内面がその台詞を言うのにふさわしければ自然と変化が生まれるものだが、そう上手くいかないから・・・
といったような事が書かれていますが、これを言い換えると内面が出来がっていないのは仕方ないからせめて外見だけでも取り繕う。
・・・とも言えます。俳優が役と同じ心理状態になかなかなれない、なら先ずは外見を整えていきましょうかっていうやり方です。
中身は伴っていないけど格好から入るみたいであまり良い聞こえ方はしないかもしれません。(現に内面の変化から演技する事を重視する演出家が諦めて最終手段、苦渋の選択としてせめて外見だけでも良くしようという意図でやる人もいます)
が、僕としては別に形から入っても良いじゃないかと思っています。
最初はそれに否定的な演出家と出逢ったので僕もネガティブなイメージを持っていましたが後年、声、身体の事を学ぶ過程でしっかりと形、姿勢を変えて内面に変化をもたらすというやり方を教わってからというもの、一つのアプローチのしかたとして有りだという考えに変わりました。
もちろん私たちは普段の生活で言葉を言う時にいちいち高い声で言おう、ゆっくり言おうとかあまり意識せずに言っているはずなので、理想はそれなのかもしれませんが、じゃあそれが難しい時にどうするのか?となったらもう一つ選択肢がある方がいいに決まってます。
ですのでなかなか内面と連動して外面が変化しないとなれば、最初は意識的に外面を変えてみるのも手だと思います。
現に例えばコスプレなどそのキャラクターの衣装を身に纏えばなんだかその気になって内面、気持ちも変わったりしていません?形から入って気分が変わるという現象も起き得る事なので、この方法は大いに活用してほしいと言いたいです。
まとめ
ではまとめです。
・各シーンを単調、退屈なものにさせないためにはそのシーンの流れが変わったと思われる所を探すと共に、役のセリフにも変化を加えていかないといけない。
・それが意識せずともできてしまうのが理想だが、そうもいかないので先ずは意識して、ここから先は変えてみようなど予め決めておく。
・その変化とは音の高低、速い、遅いのスピード、大きい、小さいの声量や「間」であったりが代表的。
・そこにプラスしてこんなイメージ、喜怒哀楽の感情も入れたらより多彩なセリフになる。
・このような作業は外から攻める、外面的アプローチとも言える。
※前回も含めてここら辺の記事は初心者にはいきなり理解は難しいと思うので、お気軽にコメントや問い合わせフォームよりご質問をしてくださいませ。
さて、これで第二段階と言える作業工程は書き終えましたかね。
このシリーズけっこう長く書きましたが恐ろしいのはこの第二段階とはタイトルの通り家で、机の上でやる台本分析でございましてまだ実際に演技をする時については殆ど触れていないんですよね〜。
ということでこのカテゴリをまとめましたら次回から最終段階、実践編になります!
最後までお読み頂きありがとうございました。
コメント
[…] 特に台本分析編の「台詞の変化」というタイトルの記事には「内面的アプローチ」「身体的アプローチ」について実は軽く触れています。 […]
[…] 他にも「台詞の変化」という記事で書いたように、台詞を言う時に意図的に音の高低やスピード、大きさを変えていくというのも良いでしょう。 […]
[…] これに関してはこちらの記事も参考になると思います。「台詞の変化」 […]