ここでは「超目的と小目的」について解説します。
おそらくこのカテゴリで一番大事な事を書きますのでアクセスしてくれた方は是非、最後まで読んでください。
これを知る事によって台本分析をするうえで必要な知識の大部分は抑えたと言っていいかもしれません。
超目的、小目的とは?
先ず「小目的」なら「大目的」じゃないんかいと思うかもしれませんが、そこはあまり気にしないでください 笑
呼び名自体はもしかしたらそれでも良いのかもしれませんが、今までこれで通してきたのでここではこれでいきます(半ばヤケクソ)
気を取り直して・・・、
ウィリアム・シェイクスピア作「お気に召すまま」に超有名な台詞があります。
All the world’s a stage,And all the men and women merely players.
「全世界は一つの舞台、そこでは男女問わぬ、人間はすべて役者に過ぎない」
※日本語での表現は各翻訳者、本などで違います。こちらでは新潮文庫から出ている訳を引用しました。(福田恆存訳)
この全体のシリーズでも俳優の仕事は日常の再現、一人の人間の人生を背負うとも言えると書いてきました。
今、我々が過ごしている人生も一つの台本として置き換える事は可能です。面白いかどうかは別として。
俳優の意識に足りないものとして舞台に立っているというより、その台本の世界で生きている、普通に暮らしているという意識が無いと言われた事があります。
それよりも俳優の目立ちたいなど、エゴが出過ぎていると僕は解釈しています。
そこで、超目的とは?
役が現時点で長い人生、時間をかけてでも欲しているものです。大きな夢、目標と言ってもいいかもしれません。
短いスパンではなく長い目で、未来、先を見据えて立てている目的、夢、それが超目的と言われるものです。「超」とはスーパー、「スーパーサイヤ人」のようにとにかくすごいものというニュアンスが込められているのだと思います。
例えばかつての僕の超目的は「俳優」としてデビューして名を知られる、広める事です。とても数ヶ月、1年くらいの年月ではなかなか達成が難しそうな目的ですよね。
このようにスケールが大きい目的って事ですね。
じゃあ、小目的は?
その超目的である「俳優」としてデビューするためには日々の積み重ねが必要です。
俳優になるために大事な事をやっていく・・・発声練習をして声を良くしていくや歴史に名を残した戯曲を読んで台詞だけの本に慣れていく、プロの演技を映画や舞台で多く観て上手い演技を具体的にイメージしてできるようにする、自分の癖だったり傾向を掴むために他人から指摘してもらい修正するべき点は直すなど・・・。
こんな超目的を達成させるために必要な日々の積み重ねを小目的と言えばいいのではないでしょうか?
それは手段とも言えます。
上記の事をもっと簡単に言えば戯曲を読む、映画、舞台を観る、ボイストレーニングに通う・・・、
大きな目的を達成するには、小さな目的を日々、達成していくのが重要だとよく聞きますよね。
それと本質は同じです。ちなみに太字にしたこの手段ってやつもはっきりするべき点です。
小目的は分かった、ならそれを達成するための手段は?ってことですね。
このように演劇における役にも超目的を誰もが持っており、それを達成するために各場面で小目的を持って行動していると言えると思います。なぜこの役がこの場面で登場しているのか、それは何かしらの小目的を持って出てきているかもしれません。
その小目的の先に超目的が待っている、繋がっていると捉えていただければ。
そんな目的を持った上で、演劇的な出来事として欠かせないのはその目的を阻む障害です。想像してみてください。
俳優を目指している主人公。渋谷駅を歩いていたらまさかのスカウトされて夢叶う!〜完〜
誰がこんな一行で表せるプロットの物語を見たいと思いますか?
その過程までに様々な出会いがあり、障害があり、葛藤して乗り越えた末に掴んだ夢、大体の物語というのは主人公は大変な苦労をして最後は大きく成長しています。
ですからもう一度言うように絶対に目的を阻んでいる障害があるはずです。
それが悪役と言えるような人物なのか、その役の過去に体験したトラウマなのか、現在の困窮している状況なのかはその台本次第ですね。その障害をはっきりさせて、きっと主人公であればその障害と対峙して、解決に持っていくため何かしらの行動を起こすでしょう。
そう、お次はどうやってその障害を解決していくのか?先ほどもちょろっと述べた手段がここでも問われます。どうやってその障害を取り除き、目的を達成していくのか?という視点ですね。
ここまでをまとめると・・・。
・役の超目的は何か?(全体における一大テーマ)
・役のここでの目的、いわゆる小目的は何か?
主になぜこのシーンにこの役は出てきたのか?を考えてみる(局地的な目的)
・その目的を達成するためにどんな手段が必要か?
・その目的達成を阻む障害は?物理的なものか、己の状況から起因する問題なのか、精神的なものか・・・(障害である以上は衝突、向かい合って闘う事もあり得る)
このポイントを整理してみて自分の役という者は何のためにこの台本の世界で動き回っているのか?はっきりさせていきましょう。
もちろん演劇では主人公、ヒロイン、脇役などと言われるポジションがあり全ての役がクローズアップされる事はありませんので一瞬で出番が終わるような役だといや、そんなもの無いよな・・・なんて思う事もあるので全ての項目を考える必要はありません。
が、少なくとも全ての役が何かしらの目的、ここでいう小目的を持って登場しているのは間違いないと思うので短い出番でも「この役の目的は?」という問いに対しては何かしらの答えを出して演じる事はできるんじゃないかと思います。
このシリーズをここまで通して読んでくれた方はどこかで似たような事、書いてあったような・・・と気付いた方がおられるかもしれませんがその通りです。
「即興」の記事でも演じる上で決めてもらいたい事で、似たように目的を持ってほしいと書きました。
この記事ではさらにその目的は今この瞬間達成しなければならない、なぜなら達成できなかったら自分にこんな被害が及ぶという部分まで決めてもらっています。その緊急性が高いというのも演劇をスリリングで面白くする要素だと思うので、目的を達成しなかったら自分はどうなる?という最悪の想定も考えてみるとより必死になって目的達成のために行動していくことでしょう。
まとめ
では今回のまとめです。
・台本の役には「超目的」と「小目的」を持っている。
・超目的とはその役が長い時間をかけて欲しているもの。
・小目的とはその超目的を達成するためにも、もう一つ達成しなければいけない小さな目的(その場で解決しそうな局地的なもの)
・その目的達成を邪魔するような障害もどんな物語にも盛り込まれているので、何がその目的達成を阻んでいるのかも重要。
・もしもその目的達成のために必死さが足りないと言われたならこの目的を達成しなかったら自分にどんな被害が及ぶのか?という視点で考えてみるのも良い。
では今回は以上になります。最後までお読み頂きありがとうございました。
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