このシリーズもいよいよ最後のカテゴリに入っていきます。今回からは「実践編」に入ります。
台本、役をもらいそれを元に実際、演じる時に何を意識すればいいのか?それを書いていきます。
しかしこのカテゴリで書く事は実はそう多くありません。今までは5つ以上の記事を書いてきましたが、ここで書く予定の記事数は3、4つくらいで収まるかな?と見込んでいます。
なぜか?それはここまでくれば良い演技ができるか否かは、これまで書いてきた事をどれだけ事前に準備しているかにかかっていると言っていいからです。
・基礎はしっかり固まっているのか?
・台本分析に抜かりないか?
他の分野でも時間が一番かかるのは作品制作に取り掛かる前の下調べ、準備だと言っています。
その土台があった上で、あとは共演者とスタッフと話し合い方向性を合わせて前に進むというのが稽古場での作業になります。
前にも言いましたがここでは予定を合わせてせっかく人が集まっているのだから、その時にしかできない事に集中するのが望ましいのです。
声優なんかだともっとシビアで舞台稽古のように何週間も時間はなく一日で終わらせる場合もあるし、完成された演技ができるのは前提で、しかもそのパターンも幾つかあるんでしょ?なんていうのを見込んでいるはずです。
その中から共演者のプランとも合わせてどれがいいでしょうね?と考える事に時間は使われるべきです。
相手に集中する。
と、ここで一つ演じる上で重要な意識を出しました。それが「相手に集中する」という事です。
相手の演技に集中すると言ってもいいでしょう。
もっと広く言えば外の情報に敏感になってください。相手役の他にもこの場で役が聞いているはずの音や、目に入ってくる情報・・・。
これらが自身の演技に大きな影響を及ぼすからです。
というか少なからず影響を受けないとおかしいとも言えます。では一つずつ解説していきましょう。
なぜ相手に集中する必要があるのか?
※セリフはもう覚えていて、忘れる事はないという状態にいる前提で書いていきます。稽古初日でまだ稽古場では覚えたセリフを言うので精一杯という状態の時は先ずは慣れる、馴染むところから始めましょう。
立ち稽古に入る前に自分はこの役を、このシーンをどう演じたいのか?そのプランを事前に立てる事が重要だとは言いましたが、ではその通りに演じる事ができたとしましょう。
それで「相手に集中していない」場合は何が起きるか?
多くの場合は、
「相役手と噛み合っていない」
「一人で演技をしている」
なんてダメ出しが出る事でしょう。
なぜそんな事が起きるのか?それは、
相手役が考えてきた演技プランと自分のプランがいきなり合致する事はそんなにないからです。
相手がこんなニュアンスでセリフを言っているのに、それに対しての返し、リアクションがそれなのはおかしいでしょと言えばいいでしょうか。
こんな現象が起きるのもやはり「相手の演技に集中していない」「相手は今、どんな気持ちでいるのか?」を汲んでいないからでしょう。
それが意識できれいれば、
「あっ、相手はこのセリフをそんな感じで言うのか」
と相手の演技に驚いたりします。
そうなると、それだけで自分が考えた演技プランに多少なりとも方向修正を求められるので、まさにライブ、その場限りの演技が生まれてくる事になりますが、その方向修正ができるのも演技プランを幾つも考えていないと無理なので、やはりセリフの言い方などを一つに固めないというのは大事になります。
これが生で、生身の人間が演じる面白さです。
ビデオソフトを再生して前と違う演技しているとなったら、それはホラーですが舞台というのはこういう事が起きています。それは音楽ライブでも同じ事が言えるかもしれません。前日と同じ演奏は二度とできないと。
このような感覚は即興を何度もやって養ってほしいと基礎編では書きましたよね。相手がどう出てくるのか、分からないドキドキ感のもと演じてほしいと。
こんな形で今まで書いてきた事をやっていれば役に立つ時がこうして必ず訪れる事になりますのでしっかりと基礎編もマスターしていきましょう。
となると声優の場合であっても画面を見て、それに合わせる事だけに集中するよりも、お隣にいる共演者をしっかりと意識して、耳を傾ける事に集中した方が噛み合った、良い演技が生まれるという事になります。
この要領で・・・、
周りの状況に合った演技をする。
集中しなければいけないのは何も相手役だけでありません。
役が居る場所はどんな場所なのか?時間帯は?
も意識する必要がありますよね。
例えば場所がとある落ち着いた雰囲気の喫茶店であった場合は当然、役以外にも周りに客が大勢いるはずです。
その場の空気、周りを意識すればあんまり大きな声を出すと迷惑になるという意識が働き、声量を抑えますよね。
これが自宅で周りの目を気にする必要がなければ、解放的な姿勢で気兼ねなく、あまり他人に聞かれたくない話でもひそひそと話す必要はありません。
このように状況に合わせてセリフを言うというのが実際に演技をする上で必要な事になっていきます。
つまりここから言える事は・・・、
実演に入ったら目の前で起きている事に集中する。
家で事前に考えてきた演技プランよりも大事なのは今、目の前で何が起きているか?です。それを無視して我を通したり、最悪こちらの思い通りに演技をしない相手に文句を言うようであれば共演者からも演出家からも評判はガタ落ちです。(相手があまりにもトンチンカンな、センスのない芝居をするなら話は別ですが)
ここらへんを理解して先ずは演技をしてもらえたらなと思います。
難しいと思うかもしれませんがこれは普段、私たちが他人と会話する時にやっている事というのをお忘れなきよう。
少なくともこのブログで推奨している演技は、
「リアリティ」のある演技です。
「日常」を誇張することなく再現する事です。
なぜか?
それは人間の生活、人生をそのまま舞台上で再現するのが仕事だからです。
そこから作品が、演出家、監督が求めている色に染まる事はあるでしょうが、その何色にも染まる演技というのが上記のような「リアリティ」のある演技です。
色がついてない、飾っていない、プレーンな演技からできるようになりましょう。
それができた上でアニメが求めているような、コントが求めているような演技をすると全然、深みが違ってくるはずです。
まとめ
では今回のまとめです。
立ち稽古など実演に入った時に何を意識して演技をするべきか?それは、
・相手の演技に集中する。
・周りの状況に合わせて演技をする。
この二つを意識した上で、
・今、目の前で何が起きているのか?それを理解し、それに合わせて演技をする。
ことが求められます。それすなわち、
・事前に考えた演技プランよりもこちらを優先するという事になります。
そうしないと、
・相手を無視したひとりよがりの演技になってしまい、それは良い演技とは言えないからです。
では今回は以上になります。最後までお読み頂きありがとうございました。
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コメント
[…] そもそも「相手を意識する」というテーマで書いた記事と言いたい事は共通するのですが、それを別の表現で表すと、 […]
[…] このへんは「相手を意識する」などの記事を合わせてお読みください。 […]